第33話

私は良い子でも何でもない。



おーちゃんに助けてもらえて安心して、抱きしめられて嬉しくなって、おーちゃんに嘘でも彼氏だと言われて舞い上がって、いつもと違う男らしいおーちゃんにひたすらときめいて。



あぁ、好きだ。好きすぎる。




「碧ちゃん?大丈夫?どこかゆっくり出来るとこ行こうか?」




俯いて動かない私を不思議に思ったのか、おーちゃんは腰を曲げて自分より背の低い私を覗き込みながら言った。


そして、私の手を引いて歩き始めた。



その手はさっきのチャラ男とは全く違って綺麗で優しくて、それに妙に顔が熱くなった。



連れてこられたのは駅の近くにある公園で、誰もいない静かなそこは、騒がしい駅とは真逆だった。


公園にあるベンチに隣り合って座ればまた、大丈夫?、とおーちゃんは心配そうに訊く。



そんな優しい所もやっぱり好きだ。


おーちゃんが好きだ。



関係を崩したくないなんて綺麗事を言っていたが、もう、伝えなければいけない。伝えたい。


もう私にはこの気持ちを隠すのは厳しい。



そう思うといつの間にか口が動いていた。




「おーちゃん、好き」




いつも言っている好きより何倍も真剣さを含めて言えば、おーちゃんは一瞬目を見開いて直ぐに微笑んだ。

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