第32話

男は彼の言葉を直ぐに理解して顔を真っ青にしたが、私一人だけが理解が遅れている。


それはきっと私が馬鹿だからだと思うが、馬鹿じゃなくてもきっと理解しがたい。



一人理解が遅れていれば、男は綺麗な容姿の彼の威圧感のある言葉に圧倒され黙って立ち去っていった。一体、何だったんだ。




「碧ちゃん、大丈夫?」




嵐のような男の後ろ姿が見えなくなれば、さっきとは打って変わっていつもの口調でおーちゃんは私に心配そうに訊いた。




「うん。大丈夫だけど」


「変なのに絡まれてたから咄嗟に出て行っちゃったけど良かったのかしら」


「そこは気にしなくていいから。助かりました。それより…」


「あ、ごめんね?彼氏とかなんとか勝手な事言って」




迷惑だったよね?と苦笑で言われる言葉に首を横に振れば、良い子ね、と頭を撫でられた。

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