第5話

“あの時”とは私とおーちゃんが初めて出会った時の事だ。



去年の夏。私は学校帰りに駅前で男に絡まれていた。


それも結構な強引な奴だった。




***




学校帰り。電車通学の私は学校の最寄りの駅へ向かう。


最寄駅は利用者数が多くて今日も帰宅する人や今から遊ぶ人たちで溢れている。


そんな慌ただしい駅をマイペースに歩いていれば、声をかけられた。




「ねえ、今帰り?暇なら一緒に遊ぼうよ」




俗に言う“ナンパ”だ。


別にここら付近では珍しい事ではない。


誰もがナンパを体験していると言っても過言ではないくらいの頻度であるのだ。




「もう学校終わったんなら暇だろ?」


「暇じゃないです」


「どうせ家に帰るだけだろ?」


「……課題があるんです」


「そんなの誰かに見せてもらえよ。ほら、行こうぜ」




そう言って私の腕を引く。



あぁ、もう鬱陶しい。


週末で疲れ果てている私は早く家に帰りたいというのにこんなところでこんな奴に捕まっているなんて時間の無駄すぎる。




「…しつこい男は嫌われるって言うけど本当その通りだな」




いつもの癖でつい思ったことをぼそっと呟いてしまった。

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