第2話 村に到着
荒れ果てた土地の中、ポツンと村があった。
通常であればそのまま村へと入るのだが今回は一部村人が武器を手に取っている
とのことなので戦闘が行われる可能性を考え少し手前で準備を整えた。
準備といってもの見習いのすることというのは大したことはなく
仕事が終わるまでの間、聖騎士の手荷物を預かっておくだけだ。
聖騎士から荷物を受け取り村の入り口へと向かう。
前回村に来た徴税人とは違い今回きたのは武力を持つ聖騎士。
徴税人殺害の村人が抵抗することなく捕まってくれれば
血を見ることなく済むのでそちらの方がありがたい。
村へと入ると突然襲撃を受けた・・・
などということはなく特に何もなかった。
それどころか村人の姿さえ見えない。
正面から戦うのは厳しいので物陰に隠れてこちらを襲撃しようとしているのか。
先の読めない展開に少し不安になる。
何組かに分かれて家を探索しようかという話が持ち上がり出した時に
小さな村の中でも比較的立派な家のドアが開いた。
聖騎士たちが身構える。
それを見て遅れて見習いたちも少し体をこわばらせた。
家から出てきたのは老人だった。
肌は健康的とはいえない焼け方をして黒ずみ、満足いく食事をとることができていないのか皮が骨に張り付いているかのようにガリガリだった。
「聖騎士様ようこそいらっしゃいました。」
ただそれだけを目の前の老人は発し、口を閉じた。
「お前がこの村の村長か」
「はい。その通りです」
隊長が問いかけると村長は返事をしてまた口を閉じた。
喋ることが無駄であるかのように。
「ではなぜ私たちがこの村へと派遣されたかわかっているな」
「もちろんです。税の取り立てでいらっしゃったのでしょう。しかし以前お役人様にお話しした通り今季は雨が少なく税となる作物が育ちませんでした。なのでお渡しできるものは何もございません」
「税の徴収だけではない。村人による徴税人の殺害の罪もある。罪を犯したものを連れてこい」
「殺害でございますか?」
「そうだ。お前たちの中に徴税人に刃を向けたものがいるだろう。」
「私たちの中にそのようなものはおりません。何かの間違いだと思います。ただえさえ食料もなく動くことすらままならない者もいるのにお供連れたお役人様を殺すことなどできません」
村長は嘘を言っていない。
栄養不足や水不足、厳しい日照りに過酷な労働。
村長は見た目よりも実際よりもずっと若いことがハキハキとした喋り方からわかる。
出会い頭の無駄話を避けるような喋り方は少ない飲み水を減らさないようにした
工夫なのだろう。もしくはそういった喋り方が村の中で常識であり久しぶりの村以外の人との喋り方を隊長の問いから思い出したのか。
ともかくこの村では徴税人の殺害など起きていないし税を隠しているわけでもない。
なんの経験も積んでいない見習いでもそのぐらいわかった。
「しかし我々には徴税人の殺害をした村人捕縛と税を回収するという仕事がある。任務失敗というのは非常事態以外容認することはできない」
隊長が淡々と言葉を述べる。
まるで徴税人殺害がなかったことや税を取り立てることができないことを知っていたかのようだ。
嫌な予感がした。
「よって村全体の責任問題とし、村長を
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