第1話 ~彼らのグループ~
買い物を済ませたので、俺らの拠点であるNAというバーに帰った。ドアを開けると、マスターのドンさんがグラスを拭きながらカウンターに立っていた。
「ただいま。マスター」
「ただいま帰りましたドンさん」
俺らは死神だ。死神として組織に育てられ、強くなった。その中でも成績はいつもトップだ。成績って何かって?それは組織の指示通りに人間に罰を与えること。与えた罰の数で成績は決められるんだ。
「今日は鳥鍋ですよ」
ちなみに、俺のキムチ鍋の内、鍋は採用されたんだ。っしゃあ!
仕事用の服から着替えていると、ドンさんが気遣って、声をかけてくれた。
「お仕事でお疲れでしょう?私が準備しますよ」
だが、サイは料理にはこだわりがあるので、いつも晩御飯はサイが自分で作ってくれている。俺は手伝わないのかって?やだな〜。料理はするけど、料理上手な人の手伝いなんてしたら足を引っ張っちゃうだろ。
「大丈夫ですよ、ご心配なく 厨房お借りしますね」
とエプロンをつけて、サイが厨房へ行った。
えっと、サイが作ってくれている間に、やることがあったんだ。
「サイ!少し出かける」
「遅れたら先食べとくからね」
「おーう…少しは残しておけよー」
俺のグループは5人グループで、俺とサイとガキが3人いる。あ。俺とサイの子ではないぞ。
「じゃあ早く帰ってこい」
今日のサイは、オカン気質がちらほらある気がする。
そして、近くの公園で電話をかける。死神事務所アサナイのボスに。
「ボス、仕事の報告と、相談が…」
死神を仕事としている俺らだが、最近悩みがあった
’’どうして俺らの殺しは許されるのか?’’
本来、死神の仕事はこの世に制裁を与えて、より良い世の中にすること。でも、この殺しという行為自体は、世の中に何の影響を与えているのだろうか。どれだけよい理由を並べようと、尊い命を奪うことに変わりはないのに。そういう疑問が俺の頭をめぐる。
ボス「最近の調子は?」
相変わらず感情が読めない声だ。実際目の前で話しても感情は隠されて、読み取れないのだが。
レン「まぁいい感じっす」
ボス「体調は?」
レン「結構いい感じっす」
あんたは父親か?
ボス「グループの管理は?」
レン「きっといい感じっす」 たぶん
ボス「…もう結構だ。で、相談とは?」
かくかくしかじか…
ボス「へぇ、君のグループごとアサナイ事務所をやめると」
相も変わらず声は冷たい。どこまで見透かされてるのか。声が震えるのを強気で我慢した。
「はい、やめさせていただきます」
「…。」
ボスの沈黙、息遣いが変わった。少し悪寒がする。
ボス「本気か?」
レン「はい」
どんな要求が来る?殺されるか?まぁ逃げるけど。
すると予想していなかった質問がきた。
ボス「どうしてお前だけでなくグループでだ?」
質問されるとは思っていなかったし、もちろんサイ以外の他のメンツの同意は得ていない。俺の独断だ。でもまぁ、俺、グループのリーダーとしてこのタイミングは逃さない。
レン「みな同じ気持ちだからです」
平然と嘘をつかせてもらおう。決して間違っていることじゃない。俺の勘はそういっている。
ボス「もう二度と戻れないぞ」
レン「わかっています」
ボス「よし、わかったゲームをしよう」
「えぇ⤴?」
ん?いや待て?ゲーム…聞き間違いか。そうだよな。驚きすぎて声、裏返ったじゃん。
「私たちアサナイ事務所は、君たちを罪人と見なす。猶予は今日から5年間。その間、私から追っ手を差し向けよう。それらから、逃げ切る、または殺してくれても構わない。生き残ることができたら、君らの勝ちだ。」
よし…気を取り直して。
想定内だ。結局この世界から足を洗うこと自体難しいのだから、その組織から抜けるにはそのくらいの関門はあって当然だろう。
俺たちのグループは、個人のレベルを単純に合わせたらほぼ中の上くらい。俺の経験から、特にやばそうなやつらも、連携が取れれば十分に勝ち目はあるな。
レン「…その提案受けます。」
ボス「決まりだな」
プチ ツーツーツー
そうしてボスとのゲームが決まった。
少し遅くなった…電話が終わるとあたりはもう真っ暗で公園のあかりがついていた。
ガチャ
「サイ、今戻った……ってない!なべの中に具がないだとぉ!?
もう食べ切ったのか!?ガオ、ナト、フミ…」
育ち盛り怖え~
白髪で黒い目をしている元気なガキはガオ。
目元が隠れるほど黒髪がかかっていて、今はもうゲームをしているのが、ナト。
耳が長くてクリーム色の髪をしている中性的な男はフミ。
すると、厨房からサイが出てきて、
「ちゃんとレンの分はとってありますよ」
とサイがお盆で運んできてくれた。
「サイ…さっすが☆」
俺はグッジョブの手をしながら、目に涙を浮かべて、皿を見ると、
チョン
「…………すっくな!」
なんだこれは鶏肉のかけらってほぼないのと一緒じゃん!
思わず笑みがこぼれた。あぁこの場所は暖かい。
きっと、これが俺にとっての「平和」だ。 こんな日々を守るために、ボスとのゲーム、俺たちは絶対に勝とう。絶対に。
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