神は堕落します

Tumami

プロローグ ~死神から罪人へ~

死神とは、人間の魂を回収する役目を担う死の神。この世界は技術が進み腐敗した社会。悪事の横行だけでなく、警察はまともに仕事をしない。そしてこの世界には死神が存在する。死神とは悪事を働くものの命を刈り取る神。それは人間だった。




あるマンションの44階


待ってくれ! ぎゃぁ!


「殺しはしない。生き地獄で苦しめよ」


ドン


動きを封じるために撃った相手の腕から、ドクドクと赤い血が流れる。


「赫い」


あぁこの色は俺の天敵だ。俺の本能が誘いこまれる。


そのとたん、僕の景色は真っ赤に染まり、頬がゆるむ。体が震え、汗がにじむ。


あぁダメなんだ。殺りたい。肉…食べたい。ダメだ。我慢しないと…


急に目の前が真っ暗になった。誰かが目をふさいでくれている。助かった…


早くなった鼓動が収まり、息が整う。


「レン?早く手当てしましょう」


視界が明るくなると、黒髪の女性が立っていた。彼女はサイだ。俺の同業者で死神だ。


「すまん、サイ、取り乱した」


俺は、自分が意識が飛びそうになったところを助けられたので、謝った。


「いえ、いつもと変わりませんよ」


「え…。」ぽかん


そそくさと片付けをしている彼女から離れて考え事をした。


(死神。悪い奴を殺すなどの手段で罰を与える役割を担った役職。俺たちはこれが天職だといわれて育てられたが、俺らのこれ(殺し)は正義か?正当化された悪行なのでは…)


そう考えていると、サイが話しかけてきたので思考を切り替えた。俺はおもむろに罪人の携帯履歴を見ながら耳を傾けた。時計は朝の5時をさしていた。朝飯何しよう…


「あの、今日の晩御飯何にしましょうか」


「ふーん また闇バイトか って、え?」


時計みた?まだ朝の5時だぞ?


「じゃぁ キムチなb」


「辛いの苦手なので却下します」


「おまっそれ、俺が辛いもん好きなの知ってて聞いてるだろ!」


サイの返答には納得しなかったが、この流れで言ってしまおうと思った。


「なぁサイ…」


「何ですか」


「死神、やめるか」


これは俺たちが死神から罪人になる話。

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