ニート編
ある大学の中央に位置する建物。その屋上にある椅子で二人の男が座っていた。
「俺ニートになりたいねん」
右手にカロリーメイトを持っている男が話しかけた。三ツ矢サイダーを持っている男は冷静に返事をする。
「ニート舐めんなよ」
「えっ? ちょっと待ってや。返しが辛辣すぎひん?」
「今言ったニートになりたいってあれやろ。就活もしんどいし、面接とか嫌やし、働きたくない、みたいなやつやろ」
「いやまぁ、そうやねんけど。そこまでわかってんねやったら、こう、なんかさ、就活に悩むやつに優しくしようみたいな気持ちがあってもええやん」
「そもそもニートの定義も知らんやろ」
「ニートに定義なんかあんの? 働かずに家おったらニートちゃうんか?」
「そんな認識でニートを名乗ってんちゃうぞ」
「えっ? 名乗ってないんやけど。定義ってなんなん?」
「ググれ」
「なんかさっきから厳しすぎひん? もうちょい味方になってくれてもええやん。今完全に敵やで」
「俺の知り合いの知り合いにニートになったやつがおんねん」
「いきなり話始めるやん。てか、知り合いの知り合いって他人ちゃうん?」
「そいつはニートになりたくてなったやつちゃうねん」
「いやだから他人……睨まんでもええやん。まぁええわ。で、そのニートは病気かなんかやったん?」
「急にやる気がなくなったからニートしてたんや」
「それってニートになりたくてなった認定してええんちゃうん?」
「そう思われるやん? それがヤバいねんて。想像してみいや。急に頑張れへんようになんねんで? 学校に行かなあかん、バイトに行かなあかんってわかってんねんで? でも無理やねん。なんで行かなあかんねやろって考えんねん。やる気がわかへんねん。動かれへんねん。でも普通に生活はできんねん。じゃあ周りからみたらどうや? ただやる気がない怠惰な人に見えるやろ?」
「そうやな。なんかつらい話になってきたわ」
「それでずっと家にいるからゲームしたりアニメみたりするわけやん」
「それめっちゃニート楽しんでない? つらい話ちゃうやん。楽しい話やん」
「でもな、そんなこともすぐに飽きんねんて。楽しいと思えんくなんねん。夜更かししてやってたゲームも、毎週楽しみにしてたアニメも、時間があったら見よ思てた映画も。全部がどうでもよくなんねん」
「やっぱつらい話やん。なんなん、気分の上がり下がりが激しすぎるわ」
「まぁそれでやな、その人は二年後にニートを辞めてん。ニートに向いてなかったってわけやな」
「そうなんや。ニートから復帰できたんやな。生活大丈夫なん?」
「最初はやっぱり大変やったみたいやな。空白があると就職も厳しいし」
「やっぱそうなんや」
「でも今は社長やってんで」
「社長かー。えっ? 社長?」
「会社立ち上げたんや。IT関係の中小企業やけど、頑張りすぎへんように頑張ってるらしいで」
「めっちゃすごいやん」
「意外となんとかなるもんなんや。だから就活がどうなろうと、どうとでもなるってことやな」
「……もしかして、これって俺を励ますための話やったんか?」
「就活に悩むやつに優しくしろ言うたやん」
「敵やと思ったら味方やったんやな」
「当たり前やろ。俺はずっとお前の味方や」
「ところで、お前は就活どうやったんや?」
「内定もらってんで」
「やっぱ敵やないか!」
田中佐藤 出井啓 @riverbookG
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