煙草編
ここは、とある大学内の庭にあるベンチ。二人の大学生が座っていた。
「煙草って『弱さ』と『強さ』で出来てると思うねん」
右手にツナマヨおにぎりを持っている男が話しかけた。ミネラルウォーターを手にもっている男は冷静に返事をする。
「煙草は草と紙とフィルターで出来てるんやで」
「そういうことちゃうねん。バファリン的な話やん。半分が優しさでできてるとかそんな雰囲気読み取れるやろ」
「そのCMやってたん結構昔やで。俺らの世代やったら知らんやろ」
「そんなことないやろ。めっちゃ有名やん。お前も知ってたやん」
「俺は知ってんねんけどな。でも、この話を――」
「ちょっと待てや。そこ深堀せんでええねん。弱さと強さのとこ聞いてや」
「弱さと強さってなに?」
「そうやろ、気になるやろ」
「強引やな」
「弱さっていうのはあれや。なんかイライラするとか不安とかあったとき、煙草吸いたいな、ってことあるやろ?」
「俺は吸わんからわからん」
「いや、一般的な話やん」
「周りも吸ってへんからなぁ」
「……そういうとき、あんねん。それで吸うねん」
「ふんふん。それで?」
「そういうのって、逃げやん。心の弱さが吸わせるわけやん」
「そもそも、煙草の依存症でイライラしたりすんねやろ?」
「まぁそういうこともある」
「弱さやのうて依存症やん。というか、マッチポンプやん。一人で付け消ししてるだけやん」
「お前、厳しいな」
「まぁええわ。それで強さの方は何なん?」
「もう一つ煙草吸う理由ってあこがれやん。やっぱ強い人とかカッコええ人を見て、俺もああなりたいって思う、強さへの気持ちやん」
「それって強さにカテゴライズされるん?」
「えっ? 強さあるやろ?」
「あこがれってことは、自分の弱さを認めてるわけやろ? それで形だけでも強くなろっていう逃げやん」
「なんか厳しすぎひん?」
「そもそも、だいたいの人はあこがれとかそんなんちゃうねん。何となくとか、親、先輩、友達、アルバイトの同僚、誰でもええけど、なんか周りが吸ってるから俺も、みたいな流され型が大半やねん。結局、弱さしかないんや。煙草は弱さの塊なんや」
「なんか、俺より語ってるやん。急にどうしたんや」
「俺は、未成年やったあの日のことを悔いてるんや。己の弱さに負けたんや。もう過ちは犯さへんって、決めたんや」
「そんな重い話するつもりちゃうかってんけど。自分にも厳しいやん。厳しさしかないやん」
「お前も煙草はやめとけ。あこがれるのをやめるんや。ほんまの意味での強い心を持つんや」
「こんな流れになると思ってへんかったわ。そんなん考えとったら頭痛なってくるやん、ほんまに」
「それはあかんな。バファリン飲むか? 持ってんで」
「めっちゃ優しいやん」
「水もあるで」
「お前は『厳しさ』と『優しさ』で出来てるんやな」
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