stage4 お前は不幸に慣れすぎている

 外国人のようである男性と、肩を並べて歩いているとふと気づいた。

 猫がついてきている。白い猫だ。ちょっと青みがかった妙な色の毛並みだった。

「それ、猫じゃないですか」

「ああ」

「猫だにゃあ」

 二人と一匹は黙り込んだ。歩調が緩み、二人は立ち止まる。彼にコウは尋ねることにした。

「喋りませんでしたか」

「ああ、喋る」

「素直に言うのも考えものにゃー!」

 男性は憮然とした顔で一言言い訳をした。

「嘘をついてどうする」

「そこをなんとかにゃ」

 俺も、そこはなんとかしてほしかったと少し彼を残念に思った。

 二人と一匹で公園のベンチに座る。コウは今更に緊張してきた。話があるって、どんな話なのだろう。

「話があるとか、俺を探していたっていうのはどういう訳ですか?」

「ああ」

 彼は猫を抱き上げてコウの手前に座らせた。

「こいつの預かり主になって欲しいんだ」

「預かり主・・・・・・?」

 愛くるしい、まだ成長しきっていないと見える白猫であった。

「なぜ、また俺に」

「君は」

 男性は口を閉じた。言い淀んでいるようだった。

「俺と同じものを感じる。だからだ」

「同じもの」

 確かに男性には何か近しいものを感じた。コウは、それが何なのか知らないことを腹立たしく思った。そして、そう思っている自分に驚いた。

 コウはそれを思い切って尋ねることにした。

「何か同じものを、確かに俺もお兄さんに感じます。不思議ですね」

 彼は頷いた。

「言ってしまうと、俺は******なんだ」

「え?」

 風か何かで聞き取れなかったのかと思ったが、そうではないようだった。

「耳慣れない言語だろう。仕方ない。周りにきっと俺たちのような存在はいないのだろうからな」

 男性は、励ますように頷いた。分からなくても、大丈夫だと。

「これから分かるさ」

 コウは何か悲しみにも似ている感情に襲われた。なぜ、この年まで見つけにきてくれなかったと思った。そんな理不尽な考えさえ、今この瞬間には妥当なことだと信じられた。

「お前は不幸に慣れすぎている」

「それは、どういう・・・・・・」

「これから俺とその猫と、他にもいる仲間がお前を支える。独り身だと知っている」


「お前を俺たちの同盟に迎え入れたい」


 コウは、俺は夢を見ているのだろうかと思った。一筋涙が溢れた。

 白猫がコウの膝下に寄り添い、喉を鳴らした。

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