stage3 俺はなぜかその人が暖かく感じた

 コウがカイ達と校門を出ると、軽快なメロディが遠くから聞こえてきた。そちらを見やると、嬉しそうな外国人が手を振らんばかりにしてこちらに視線を寄越している。何か道具をショルダーバッグに仕舞い込んでいる。

「なんだありゃ」

「誰かに知らせる?」

「サヤ、あの人なんだろう・・・・・・」

「ちょっと待って、なんだか妙な気配があるわ」

 緊張するサヤとリエに、コウは話しかけた。

「なんだか俺に用がありそうだから、ちょっと話してみるよ」

「まじ?」

 その時、その外国人が手を振ってきた。

 その男性は、コウに向かって、ちょっと話さないかという。コウは、その男性になんだか懐かしいような気持ちを覚えた。見も知らぬ人なのに、不安感が少し消えた。

「初対面ですよね?」

 日本語が通じるのだろうかと思いながらも、コウは勇気を出して話しかけてみた。

「そうだが。どこか落ち着いて話せる場所はないか? 君にすぐにでも話したいことがあるんだ」

「落ち着いて話せる場所・・・・・・」

「君を探していたんだ」

 コウは首を捻る。一体どう言うことだろう。探していたって? それに、何を話すというのだろう。コウはカイ達に聞いてみた。

「どうしよう?」

「カイ的には、この人はお前にとっては悪い人ではないんだと思う」

「サヤは、リエと帰るわ。重要そうだから、聞いておいたら。カイは残るの?」

「いや、俺も帰るよ」

「えっ、リエ帰らなきゃいけないのー?」

 そうだよ、とカイとサヤは騒ぐリエを押すようにして帰っていった。

 コウは男性の探しにきたという言葉を思い出した。少し感動した。コウは身寄りがなかった。市の制度と遠縁の援助で暮らせてはいるが、一人住まいだった。

 なんで俺を探しにきたんだろう。

 コウは提案した。

「公園とかどうですか? 今日はまだ暖かいですし」

「それが君の不安がない場所なら」

「じゃあそうします。ここから5分ほど行った先に公園がありますから」

 ちょっと失礼かと思ったが、気兼ねして言わないよりいいかと、コウは心配声で尋ねてみた。

「それと、ちょっと日本語不自由ですか?」

「そうだ。頑張りたい」

「いえ、頑張れるなら大丈夫なんですけど」

「特に日本語は難しい」

 不機嫌そうに言う男性は、意外に素直な性格のようだった。


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