第25話

 昔は意に沿わない相手でも生活のために結婚せざるを得なかっただろう。

 女性が仕事をしてひとりでも生活していける時代になったのは喜ばしいことのはずだ。なのに恋愛離れの一環として語られることには腹立たしく思う。

恋愛から離れてしまうのは、単純に傷つきたくないからじゃないだろうか。


 親しく思うからこそ、近づいてやけどのように心に傷を負う。そんなことは誰も望んでいないのに。


「こんなこと考えてるから駄目なのかなあ」

 高校時代、考察のひとつを話したら友達にドン引きされたから、それ以来は誰にも話していない。そのとき話したのは、バレンタインについてだ。


 昔は女性から告白するなんてとんでもないという時代があったようだ。それで「女性から告白してもいい日」と言われて便乗する女性が多かったのだろう、だからバレンタインは一大ブームを築き、深く強く浸透することができたのだ、と。

 今は時代が変わったから、女性からでもいつでも告白できる。だからバレンタインの重要性が変化し、その、価値観も変化してきている。


 そういうことを話したら、ドン引きされつつ、

「そんなのどうでもよくない?」

 と一刀両断されてしまった。


 最近はそんなことを考える機会は減った。これが大人になることか、とさみしく思った時もあったが、いつしかその気持も薄まっていった。

 だけど、こんなことがあるとまた考えてしまう。


「友達は彼女だけってわけでもないのに。依存してたかなあ……ああ、掃除しよ!」

 掃除なら気分転換になるし部屋もきれいになって一石二鳥だ。




 掃除を終えた紗都は、小腹のすいたお腹を押さえた。

 時計を見ると午後五時だった。おやつには遅いし夕食には早過ぎる。気温が下がってきて肌寒い。


 紗都はマグカップに牛乳を注ぎ、スティックシュガーと片栗粉を入れて混ぜた。それを三十秒レンジアップしてから取り出して混ぜる。それを三回繰り返すととろとろでぷるぷるな、葛湯のようなホットミルクが完成だ。もっと片栗粉を増やせばミルク餅のようになるが、今の気分は葛湯風だった。


 スプーンですくって、それを食べる。

「あま……」

 幸せな気持ちでまた一口食べる。とろとろの触感が楽しい。食べるごとに温かさが広がり、お腹がほかほかしてくる。

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