第24話
帰り道で一言投稿サイトを見ると、黎奈は紅葉コーデを上げていた。
クリーム色の無地の着物で同色の帯には紅葉した蔦。お太鼓結びの太鼓部分にはいっそうあでやかに、赤い葉が踊るように描かれている。
帯締めはグレーで、帯揚げの紺色とトルコ石のような帯留めがアクセントになっている。
「今回も素敵」
いいねを押してから、自分が紅葉コーデをするなら、と考える。
が、手持ちの着物だとできなさそうだから、芸術の秋、と考えてみる。
音符の帯があるから、絶対にそれ。着物はグレージュの千鳥格子なんて紅葉に映えるかな?
わくわくしながら黎奈にメッセージを送る。
『今度の土曜日、一緒にイチョウの並木道に行かない?』
有名な紅葉スポットに誘った。イチョウだから黄葉と言うべきか。ちょうど見ごろとなっているはずだ。
『ごめん、土曜はデートなの』
その返信に、紗都は少なからず落胆した。
『わかった。楽しんできてね』
返信してから、またね、とスタンプも送る。
はあ、とため息をついてスマホをバッグにしまった。
もうすっかり夜だ。
見上げる空には星なんてまったく見えない。夏と違って空気は澄んでいるはずなのに。
冷たい風が吹き、紗都はブルっと体を震わせた。
土曜日になるとひとりで部屋で過ごした。
ひとしきり動画を見て、ふう、と息をつく。
イチョウの並木道、ひとりで行っても良かったかな。でも友達連れとかカップルばっかりだろうから浮くよね。
黎奈は今日はデートだと言っていた。
デートかあ、と紗都はうつむく。
やっぱり年頃なら恋人作ったりするよね。私がおかしいのかな。
恋人がほしいとは思えないし、結婚なんてなおさらぼんやりしていて実感がない。
ネットニュースを流し読みしていると、気になるタイトルがあったのでクリックする。
小難しくて怪しげな名前のついた研究所の人が若者の恋愛離れについて語っていた。女性の自立が理由として挙げられたり、男性側から女性にアプローチしなければならないから、ハラスメントにとられたらという不安があり、リスクに見合わないからだと論じていた。男性が書いたせいか、男性の都合の話しか書かれていない。若者でまとめずに「若い男性の」と書いてほしいところだ。
女性の自立を恋愛離れの理由として挙げられると、女性が非難されているようでもやもやする。これは被害妄想だろうか。
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