第7話 戦闘
「カロン! アトラ!」
俺はカラドリウスの背中から飛び降りると、倒れている二人に駆け寄る。
そして、二人の状態を確認する。
二人とも気を失っているようで動かないが呼吸はある。集落の人たちも全員魔獣によって襲われたらしく。酷いありさまだった。
視線の先には、巨大な魔獣がいる。その体はまるで岩のような皮膚に覆われており、その爪は鋭く尖っている。
これが、魔獣というものなんだろうか。
魔獣の傍には、ローブを被った数人が鎖を操っていた。
……あの鎖は、一体?
すると、魔獣が俺に向かって突進してきた。
その巨体に似合わず素早い動きだ。
俺はカラドリウスに視線を向ける。すると、俺の意図を汲み取ったのか、小さく頷くと群れを率いて魔獣に向かっていく。
魔獣は瘴気を纏いながらカラドリウスの群れに突進していく。その瘴気は触れたものを腐食させていくらしく、通り過ぎた地面は黒く変色していた。
「カラドリウス!」
俺が叫ぶと同時に、群れのボスが魔獣に向かって突進していく。
そして、その爪で魔獣を切り裂いていく。どうやら、その爪には瘴気を祓う力が宿っているのか、魔獣の体は一瞬にして消滅する。
「カラドリウスは生け捕りにしろ。警戒心の強いやつらがこんなにたくさんいるなんて千載一遇のチャンスだ。間違っても殺すな」
ローブの男は、そんな命令を下す。
魔獣を操っているのはやはりあいつらで間違いないらしい。
「カラドリウス、力を貸してくれ!」
俺に懐いていたカラドリウスがこちらにやってくる。
手に刻印された紋章が輝き、その光はカラドリウスを包んでいく。
「キュイイイ!!」
カラドリウスは俺に向かって鳴いた。
その鳴き声に反応するように、手の甲の刻印が光り輝く。
すると、カラドリウスの体が変化し始める。
その体はどんどん大きくなり、やがて見上げるほど巨大な姿へと変貌した。その姿は神獣と呼ぶに相応しい威厳と美しさを兼ね備えている。
「何者だ、お前。カラドリウスに何をした?」
ローブを着た男は俺に問いを投げかけてくる。
だが、その問いかけには答えない――
「カラドリウス、村を守るために力を貸してくれ」
俺がそう命じると、カラドリウスは咆哮を上げる。
その咆哮は空気を震わせ、大地を揺らすほどのものだった。そして次の瞬間に、魔獣を抑えていた鎖が弾け飛ぶ。
「な、そんな馬鹿な、あの魔具が壊れただと……」
男は信じられないといった表情でカラドリウスを見つめている。
そして、魔獣が怒り狂ったように暴れ始めた。
「くそっ! 撤退だ!」
ローブを着た男たちは、一目散に逃げていく。
暴走した魔獣は変身を遂げた単身のカラドリウスに突っ込んでくる。
「キュイイ!!」
カラドリウスは、巨大な爪を魔獣に叩きつけた。その衝撃によって大地が揺れる。そして、大量にいた魔物は一瞬にしてバラバラに切り裂かれた。
――これが、神獣の力。
俺は、カラドリウスの圧倒的な力に呆然としていた……。
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