第3話 盗賊
翌朝――。
藁でできたベットから起き上がり、外がやけに騒がしくなっていた。何かあったのかと思い、外に出ると集落の住民は村の祠の前に集まっていた。
「何かあったのか?」
近くにいたアトラに声をかけると、彼は険しい表情で答える。
「……ああ、また奴らが来たらしい」
「奴ら?」
俺が首を傾げると、アトラは小さく舌打ちをして続けた。
「最近、この森に盗賊が出没しているらしくてな」
「盗賊……」
……なるほど。それで皆騒いでいたのか。
しかし、何故そんな連中がわざわざこんな辺鄙な場所に来たのだろうか。そんな疑問を抱いていると、カロンがやってきた。彼は険しい表情で口を開くと言った。
「彼らは、カラドリウスを狙っておる。カラドリウスは、『神の使い』と言われていてな。この村の住人が必死に守ってきた『神獣』なんじゃ」
……神獣。俺に懐いていたあの鳥は、そんな偉大な存在だったのか。
カロンの言葉を聞いて、アトラが口を開いた。
「この祠にはカラドリウスをこの地に留めている『槍』がある。奴らはきっとどこかでそれを狙ってる。あの槍を使えば、村の人間にしか懐かないカラドリウスを簡単に捕獲することができるからな」
つまり、その盗賊共はカラドリウスを捕まえようとしているわけか。
……しかし、どうしてそこまでしてあの鳥を狙うんだ。そんな疑問を抱いていると、カロンが何か察したのか口を開く。
「カラドリウスを狙う理由が分からないといった顔じゃな」
「……ああ。俺には理由が分からない」
素直にそう答えると、カロンは小さくため息をついた。
「簡単なことじゃよ。カラドリウスの『羽』は病の原因である病魔を吸い取ってくれる。王都では高額で取引されているそうだ。奴らにとっては、喉から手が出るほど欲しい代物なんじゃろう」
……なるほどな。だから、こんなにも必死になって捕まえようとしているわけか。そんな事を考えていると、アトラが口を開いた。
「しかも、奴らは丸腰でというわけでもないらしい」
「……というと?」
俺が首を傾げると、カロンが顔をしかめながら答えた。
「……奴らはカラドリウスの羽を欲するあまり、魔獣を引き連れているようじゃ」
「魔獣?」
……それは、一体どんな生物なんだ?
「この世界には多くの生物が存在している。この世界の生物は、神獣か魔獣のどちらかにカテゴライズされておる。神々の加護を受けた神獣。悪魔の加護を受けた魔獣。神獣は人々の生活を守り、人々に加護を与える。魔獣は人々の生活を壊し、人々に絶望を与える。そう、昔から言い伝えられているんじゃ」
カロンはそう言うと、こう続ける。
「儂らはカラドリウスを守るために戦わねばならん」
そんな危険なのと戦うのか。大丈夫なのだろうか……。
そんな不安を抱いていると、カロンがこちらを見る。そして、俺の目を見ると小さく微笑んでみせる。
「……アル殿は、ここで待っておればよい」
「いや、でも……」
俺が反論しようとすると、カロンは首を振った。
そして、俺の肩に手を置いて言った。
「大丈夫じゃよ。すぐに終わる。それに、儂らはここを守らなければならない」
「いや、だけど……」
なおも食い下がろうとすると、今度はアトラが俺の肩に手を置いた。そして、優しく微笑んだ。
「……お前には命をかけてこの場所を守る理由はないだろう。ここは俺たちに任せてくれればいい」
その言葉に何も言えず黙り込むしかなかった……。
話が途切れると、二人は俺に背を向け、集落の外側の森へと歩いて行った。集落の人全員がそれについていくように歩みを進める。
……俺は、その光景をただ見送ることしかできなかった。
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