大阪弁について【ネタバレなし】

 時々『をんごく』や『骨を喰む真珠』に寄せられるご感想で、「昔の大阪弁なので読みにくさを感じる」というのをいただきますが……。


 読みにくいと感じた方、すみません。

 分かりにくいかもなとは薄々感じているんですが、現代の大阪弁に変えることはどうしてもできません。言葉が小説の基礎となっている以上、「大正時代の大阪弁を使う登場人物」が出るのならばある程度はその言葉遣いに沿わないと、設定と文章がかみ合わなくなり、作品世界が成り立たなくなるからです。


 ……と偉そうなことを書きましたが、実は当時の大阪弁を完全に再現しているわけでもないです。というより、実質的に不可能なのです。

 言葉は生き物なので、地域のちょっとしたズレ、世代によってもかなり違ってきます。数少ない資料から言葉遣い、ニュアンスのすべてを再現することはできません。 

 できたとしても、耳慣れない言葉を使いすぎるとリーダビリティが下がるので、どうしても調節しなければならないところはあります。

 発声の方法すら違うという話もあるので、これは文章で表現することも叶いません。


 ですので、私が大阪弁を書くときは「できる限りの範囲で再現しつつ、自分でもよく分からないところ、伝わりにくいであろうところはやや現代風にする」というスタンスを取っています。


 一方で「おばあちゃんの使っていた大阪弁と似ている」「音声で聞こえるよう」というご感想をいただくこともあり、とても嬉しく思います。ありがとうございます。


 さて、『骨を喰む真珠』の登場人物ですが、大阪弁、船場ことば、標準語を使う登場人物が入り混じっています。大阪弁と標準語はすぐに分かると思うのですが、実はひとりだけ船場ことばを使う人物がいます。


 ネタバレというほどのことでもないので名前を出しますが、途中少しだけ登場する行田夫人が船場ことばを使っています。よく読むと「何かちょっと語尾の雰囲気が違うな」というセリフがひとつあるかと思います。

 

 この行田夫人だけがなぜ船場ことばを使うのか、説明すると本筋のネタバレになりそうなので控えますが、舞台となっている土地にどういう人物が住んでいるのか書いているので、それを踏まえれば分かっていただけるかと。


 さて大阪弁を使う登場人物ですが、簡単にいうと次のように置き換えればだいたい意味は掴めるかと思います。


【一人称・二人称】

わて…私。女性が使います。

わし…私。男性が使います。

おまはん…お前さん

あんたはん…あなたさん。普通目上のひとに対して用います。

あんさん…あなたさんの略語。商人用語。(これを使っているのはひとりだけです)

 

【おます】

おます…(…で)あります。本作では「です」の意味で使っているほうが多いです。  例:終わったとこでおます/終わったところです

おまへん…「おます」の否定形  例:分かるもんやおまへん/分かるものではありません

よろしおますか…いいでしょうか


【その他】

さかい…から。ので。よって。 例:言うとるさかいに/言っているから

よって…から。ので。

おせる、おせぇる…教える 例:教ぇてました/教えてました

大事ない/大事おまへん…別条ない(かまわない、差し支えないという意味もあります)  例:大事おまへん/大丈夫です、問題ないです

なんぞ…何か  例:なんぞ良うないこと/何か良くないこと


 よく使われるものや、少し意味が取りづらいものを挙げてみましたが、「おます」が頻出でしょうか。だいたい「昔の大阪弁の語尾なんだな」くらいに思ってもらえればいいと思います。「読んでいて意味が分からなかった」というものがあれば、カクヨムかXで言ってもらえれば追加します。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る