さそわれて…

岳者

さそわれて…

 今日は3月3日だ。3月3日といえばひな祭りだ。だけど自分には何にもおめでたいことなどない。結婚してみたいけど出会いがない。

そんな事を言っていると目の前からニヤニヤしながらこっちに向かってくる先輩の姿があった。

「やあ、夜麻くん。ご祝儀貰っていいかな?」

「え?なんで急にご祝儀なんか貰うんですか?冗談ですよね?」

 伊寺さんはよく冗談を言う人だから自分は苦笑いをしながら訊いた。

「いやいや、夜麻くん…冗談だなんてそんな事ないさ。ほら、これ。」

 伊寺さんからはスマホを差し出された。

 その、スマホにあったのはインスタグラマーの『色野ゆいは』という人だった。その、インスタグラマーはインスタグラムをしていない自分でも知っている人だった。

「先輩!こんな可愛い人と結婚するんですか!?」

「夜麻くん静かに。いい事を教えてあげるからさ少し静かにしてて…。」

 自分は静かに頷き自分の耳を伊寺さんの方に向けてこっそり教えてもらうことにした。

「じゃあ、言うよ?今、ひな祭りのイベントがやっているから婚約者を簡単に探すことが出来るよ…案内するから行こうよ。俺みたいに美人さんと結婚できるよ。」

「ちょうど結婚したいと思っていたので行きたいです!お願いします!」

 伊寺さんはニッコリして昼休憩で外出をする事となった。


 やっと昼休憩となった。自分と伊寺さんの仕事はほぼ終わったから長く休憩を取れる事になった。

 何も喋らずに会社から出た。ゲームかのように伊寺さんの後ろをついて行く。通る人など気にしないで早足で祭り会場へ行く。

 急に右に曲がりビルとビルの間の路地裏に入ってく。

 何分歩いたかわからないけれど人のざわめき声がだんだん聞こえてくるようになってきた。

 そして、着いたのは浴衣を着た高齢者が多数だった。自分が芝生に踏み込んだ瞬間に高齢者の人たちが俺たちの方を見た。

 その、高齢者は俺の方を見てから一言。

「あなたの結婚したい人は誰ですか?」とだけ言われて自分は戸惑ったが、高校まで同じだった女友達の名前を出した。「かしこまりました…」と言われてから青系の着物を無理矢理着せられた。

 裏の方から何かを殴っているような音が約20分くらい聞こえていた。自分は少し怖がりながらも座っていた。手に汗握り背中には寒気がしていた。

 そして、音が鳴り止むとに赤い服を着た何かが担がれてやって来た。やって来た何かをよく見ると頭がボコボコしている俺の幼馴染だった。

 自分はこの場に居られなくなりさっき着ていた服を手に持ち着物のままこの祭りから逃げ出した。

 会社に戻らず自分の家に直帰した。


 あれから3日経過した。伊寺さんと会いたくなくて会社には体調不良として休んでいる。

 インスタグラムを入れて『色野ゆいは』を調べると3月2日で更新が止まっていた。

 そして、あの女友達に連絡をしても『電波が届かないところか電源が入っていない』と音声が言った。

 やっぱりあの祭りは存在していたのか…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

さそわれて… 岳者 @rimoKON14

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ