第36話

閉じた襖ごしに、声をかける。

「凌さん、お聞きしたいことがあります」

当然ながら凌は答えてこない。

「碁は、打てますか?」

バン!と襖が開いた。その手には登山ナイフが握られている。

ハクは動じることなく抱えていた碁盤と碁笥を見せた。

「・・・・・・この家から、出て行け・・・・・・化け物」

「ご心配なく。そう長居はしませんよ。それより、質問には答えて頂けないんですか?」

凌は激しくにらみつけ、低く呟いた。

「おまえとはやらねぇよ」

「では、打てるということですね。・・・・・・勝負しましょう。あなたが勝てば、なんでも言うことを聞きます。そのかわり私が勝てばこちらの願いを叶えてもらう」

しばし無言になった凌の目が思案して揺れる。

「みぃと、別れるってことか」

ハクは静かにうなずいた。

「・・・・・・それがあなたの願いなら」

「本気なのか」

「はい。ただし。みんなのいる囲炉裏部屋で勝負しましょう。あなたの不在を悲しむ人がいるんです。食事をされないのでしたら、一時間後に来てください」

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