第5話

「・・・たったこれだけですか・・・。これではたりません。お願いです、今夜わたしをこの桃源郷の水がある場所まで連れて行ってください。そうすれば、月に帰れるのです。」

「月に帰る??」

魚はほろほろと泣きながら、身の上を語りだした。

「今から1000年の遥か昔、わたしはかぐや姫様のお付の者だったのです。姫様が月に帰られる夜、育ててくれた翁たちのことをあまりにも心配されるので、わたしが残って行く末を見届けてから帰ります、とお約束致しました。わたしは、清浄な水さえあれば迎えが来なくても月まで帰れましたから。けれど、翁たちが幸せな一生を終え、世を去ってからもこの地上に穢れのない水はなかなか見つけられず、いつしかわたし自身の体はカラカラに乾いて深い眠りについてしまいました。今、水を得てようやく眠りから覚めましたが、一度目覚めた以上は、もう今夜にも月に帰らなければ明日の朝にはわたしの体は消えてしまいます。」

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