晴耕雨読
@kai-mizuki
第1話
昨夜から降り始めた雨足が激しくなったのは明け方のことだ。ベッド側の窓から聞こえる雨の音で目を覚ました。時計を見ると午前5時を少し回ったところだった。起床予定時刻まではまだ少しある。再び寝ようと瞼を閉じた。雨の音に耳を傾けていると幾つもの雨音が複雑に絡み合い、まるでハーモニーを奏でているようだ。空から落ちる雨の音は空を切るようなザァァァァという音と一緒に不規則に或いは連続して激しくバラバラバラと屋根を打ちつけている。一方降り注いだ雨粒が屋根を伝い落ちるとき、雫となって一定のリズムで静かにぽたりぽたりと音を奏でていた。更にそこへ跳ね返る水滴の音がピチョっピチョンと加わるのだ。
気だるさを残したままキッチンで湯を沸かし、インスタントコーヒーを淹れ啜った。カップから立ち昇る湯気に混じって香るコーヒの匂いを嗅ぎ、手元のスマホに目をやった。雨天のせいもあるが、外は暗い。取り敢えず読みかけの本を開いた。
『ヒッタイト◯◯』と言う本である。先週行ったブックカフェで見つけて購入した本の中の一冊だ。
紀元前二千年ごろの文明であるため未解明のところもあるようだが、解明された文書なども紹介されている。紙のない時代に残されている文書は粘土板に楔形文字で記されており消滅した文明を知る貴重な資料である。これらを読み解くために費やした研究者の時間と労力とはいかほどのものであろうか?その恩恵に預かって、私は四千年の時を超え、古代の人々の生活や思考に触れることができるのだ。なんとありがたいことであろうか。
さて、この本を読んでいて不意に思ったことは、古代の人々も現代の我々も然程には変わらないと云うことだ。科学技術の発展とそれに伴う文明の力の違いはあれど、国が造られ、政治的システムを持ち、法が整備され、交易をし、経済を潤す。そして時に戦争をする。人間の業が人を動かし社会が組織されると言う点でこれまでも、そしてこれからも同じところをぐるぐると巡っているようだ。などと考えているとろで眠気がやってきたので、再びベッドに潜り込んだ。
まぁいい、今日はこのまま気持ちよく惰眠を貪ろう。
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