『運命改変の占い師』


プロローグ:運命を告げる者


王都の片隅に、一軒の小さな占いの館があった。


華やかな通りから少し外れた路地裏。そこにある店の主は、まだ若い男だった。


ライル・エストレア。


「当たる占い師」として評判の彼だが、その正体を知る者はいない。

なぜなら、彼の占いは未来を見通すものではなく、告げた未来が現実になるものだったからだ。


「あなたは明日、大金を手にするでしょう」


そう言えば、客は翌日、本当に大金を得る。

「あなたは生涯、幸福な人生を送るでしょう」

そう言えば、その客はなぜか次々と幸運に恵まれる。


彼の言葉は、未来の可能性を“当てる”のではなく、“作る”ものだった。


だが、ライル自身もこの力の正体を知らなかった。


これは、彼が「世界の運命」と対峙する物語。



---


第一章:王女と偽りの運命


「あなたがライル・エストレアね?」


占いの館に現れたのは、一人の少女だった。


年の頃は十六、七。金の髪を持ち、気品ある立ち振る舞い。

しかし、彼女は貴族の身分を隠すような地味な装いをしていた。


ライルは軽く微笑み、占い師らしい口調で尋ねた。


「いらっしゃいませ。今日はどんな運命を知りたいのですか?」


少女は真剣な眼差しでライルを見つめ、静かに口を開いた。


「――私が王族の血を引いていると占ってほしいの」


ライルは少し驚いた。


王族? この国の王家は、現在は正統な血筋の者しかいないはずだ。


「……なぜそんなことを?」


「証拠がないの。でも、私は確信してる。私の母はかつて、王の寵愛を受けていたと。だけど何も証明できない」


少女は悔しそうに拳を握る。


ライルは一瞬考えた。もしここで「あなたは王族です」と占えば――

本当に彼女が王族として認められる現実が生まれてしまう。


(これは……今までの客とは違う。冗談では済まない話だ)


だが、ライルは同時に気づいていた。


この少女はすでに王族である可能性が高い。

なぜなら、彼の力は根拠のない未来を生み出すものではなく、

「可能性を確定させる力」だからだ。


もし彼女の言葉が真実なら――彼が占うことで、それは現実になる。


ライルは深呼吸し、静かに告げた。


「あなたは王族です」


その瞬間、少女の体から金色の光が広がった。


部屋に飾られた古い鏡が輝き、そこに映った少女の首元に、

今までなかったはずの王家の紋章の刺繍が現れる。


少女は驚き、ライルは息を呑んだ。


(やはり……俺の占いは、ただの予言じゃない)


少女は震えながら、鏡に映る自分を見つめた。


「これ……本当に……?」


「ええ、これで証拠ができましたね」


ライルは苦笑した。


彼の力が、再び“運命”を作り替えてしまった瞬間だった。



---


第二章:運命を操作する力


彼の占いを受けた瞬間から、少女の運命は変わり始めた。


翌日、王宮では大騒ぎになっていた。


「新たな王族の証が見つかった!?」「隠された王女が存在していたと……?」


ライルの言葉が現実になったのだ。


だが、それを知ったのは王家だけではなかった。


王族の存在が変わることは、国の支配構造が変わることを意味する。

つまり、ライルの力を利用しようとする者が現れるのは時間の問題だった。


そして――その噂を聞きつけ、王国の暗部に潜む者たちが動き出す。


「“運命を作る占い師”……か。そんな便利な存在を、野放しにはできないな」


ライルの力を利用しようとする王宮の者、

そしてライルの力を危険視し、消そうとする影の組織。


運命を変えられるがゆえに、彼の運命もまた、大きく揺れ動こうとしていた。



ライルの力を巡り、王国全土を巻き込む陰謀が動き出す!

果たして、彼の力は「希望」となるのか、それとも「災厄」となるのか――?

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