うちの変わったひな人形

@mia

第1話

 私はひな祭りが嫌いだ。

 ひな祭りに飾る人形が嫌いだ。


 うちは古くから続く家で代々伝わる古いひな人形を飾るのだ。

 七段目までに飾るのはオビナやメビナ、三人官女、五人囃子など、ごくごく一般的な人形だが、八段目からは変わっている。変わっているというか、普通じゃない。

 上の段の半分くらいの大きさの人形が老若男女、何人もいる。

 今まで友だちの家に行ってひな人形を見せてもらったり、テレビコマーシャルで見たりしたが、うちみたいなひな人形をみたことがない。

 このひな人形の何が嫌いかと言うと、小さい人形たちが気持ち悪い。上の人形たちには感じない、今にも動きそうなそんな気配を感じる。

 小学校に入る前、当時まだ元気だったおばあちゃんに「あなたは本当にこのひな人形が好きだね」と言われてとても驚いた。

 私は好きだから見ていたのではない。怖いもの見たさというか、気持ち悪くて目が離せない状態だっただけなのに。

 それなのに好きだと思われたショックでひな人形の飾ってある部屋にはそれ以来入らないようにした。

 

 だから今日、十年ぶりくらいにひな人形の飾ってある部屋に入る。お母さんに頼まれてちらし寿司や甘酒を運びに来た。

 段飾りの前に小さいテーブルがあり、そこにちらし寿司などを置くのだ。

 今まではお姉ちゃんが運んでくれた。「ひな人形が嫌いって、変なの」といいながらも運んでくれた優しいお姉ちゃん。

 でもそのお姉ちゃんが今年はサークルの合宿でいない。

 仕方なく私が運ぶ。

 私は人形を見ないようにちらし寿司に意識を向けて部屋に入り、テーブルに近づく。ちらし寿司などを置きそのまま部屋を出るつもりが……。

 記憶よりも小さい人形がふえている気がした。気になってもそのまま部屋を出ればよかった。見なければよかったのに、つい見てしまった。

 その人形は三年前に亡くなったおばあちゃんに似ていた。その隣の人形は写真でしか見たことがない、おじいちゃんに似ているような気がする。おばあちゃんに似ている人形と目があったとき人形が笑ったような気がしたが、目を背け見なかったことにして部屋を出た。

 どうしよう。おじいちゃん似の人形の隣の人形、音信不通の健一叔父さんに似ていたような……。

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