第38話

「ユラちゃーん」


「……え?」



ひらひらとアタシに向かって手を振ってくる彼の名はダイチくんで、此処はアタシが通う学校の正門。


彼は大きなバイクに跨ってアタシを呼ぶ。



「よ!元気〜?」


「元気〜?って一昨日会ったばっかじゃん。……まあそれなりに?」


「ちょっとドライブ行こーぜ。どーせ暇だろ?」


「滅茶苦茶急じゃん。まあ暇だけどね?」


「ふは、だと思った〜。んじゃーしゅっぱーつ!」



タクが生きている事を確認出来たあの日から、ダイチくんは定期的にアタシを遊びに誘うようになった。


元々silentのメンバーの中では一番アタシの事を遊びに誘ってくるし、連絡もしてくれていたから別に変だな、とは思わないけど。



「で?何処行くの?」


「今日は隣町のゲーセン!ユラちゃんが好きだって言ってたぬいぐるみの大きいサイズ入荷したってさ〜!」



確実にあの日以降、アタシの事を心配して連れ出してくれる日が増えたと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る