第36話

彼と話してからずっとアタシの涙は止まってくれない。


どうしたらいいのか分かんない。


涙の止め方なんて、知らない。



"会いたかった"


"寂しい"


"一緒に居たい"


"だいすき"


"嘘吐き"


"生きてて良かった"



彼に会って何を伝えようかと悩んでたけど、勝手に口から出てきた言葉の数々。


彼はそれを俺もと返してはくれなかった。


それだけじゃなくて、彼の残した言葉は今のアタシには痛い程刺さった。



「ごめん、ユラちゃん。抱き締めさせて」


「……ッごめ、ありが、とっ」



痛いくらいに強く抱き締めてくれたダイチくんの匂いは、シトラスの爽やかな香りがした。


タクよりも大きくてしっかりとした体と筋肉に、この時のアタシは縋るしか術が無かった。


なんで、どうして、と考えれば考える程に分からない彼の気持ち。


もう好きか分からない、なんて思ってたけど会えば会っただけで好きだと思ってしまう。



「……ッ」



久しぶりに嗅いだ彼の甘ったるいバニラの匂いは、当分忘れられそうも無い。

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