ひなまつりのネタ流しは海を越える

かたなかひろしげ

詰めるがつまらない話

俺の相方のナガノは、今朝も元気が有り余っているようで、開口一番にまたわけのわからないことを言い出した。


「なあなあ、流し雛ってあるやろ。ウチもあれにあやかって、今年すべりまくったネタを、川に流そうと思うんや。厄払いや。」


そうだ。よく考えたら今日は3月3日、ひな祭りの日や。

いつも漫才のネタばかり考えているナガノでも、カレンダーを見る余裕ぐらいはあったらしい。


とりあえず俺もつっこむ。


『いやいや、あれは厄を人形に移して払うものやろ。すべったネタと一緒に川を流される人形の身ぃにもなってみいや?

しかも、最近のすべったネタって、あれやろ?

一発ギャグの「にょろ~ん」ってやつやないか。人形がどうしてくねくね踊れんねん、どっかの都市伝説やあるまいし。』


ナガノから秒で返される。こういう無駄な話だけは妙に反応が良い。ああ、漫才の時にも欲しいよ、その反応速度。


「そうや。川から流れたら、いずれ海にいくやろ。それで地球の反対側のブラジルの人が、俺の人形を拾ってやな、「にょろ~ん」をブラジルの裏側でやってくれるかもしれん。それであのネタも成仏さんや。」


なるほど、いわゆるボトルメールみたいなやつか。ナガノのギャグを流すとか、海に産廃流すのと変わらん気がするが、なんや無駄にロマンのある話や。

すこし乗っかってみよか。


『ほなら、うちらの動画チャンネルのURLのQRコードを、瓶にいれよか。あの再生数3のやつがええやろ。』


「あれなら、昨日俺が観たから再生数4に上がってんど。

よし、ほなら、この掴んだら鳴く黄色いチキン人形の腹の中にみっちり詰めて流したるわ! 成仏せいやー」


『それ、もう雛人形でもなんでもないやん。

ただの島流しサムゲタンやろ。』


冴えない俺のツッコミは兎も角、ナガノは満足そうに、事務所に転がっているチキン人形にQRコードの紙をねじ込みはじめている。

・・・あ、あそこまで頑張って詰めたのに、海に流したら紙溶けるかも、って今更気が付いたらしい。泣きそうな顔して紙をまたほじくり出している。忙しい奴や。


───さてはて。1年後、ブラジルで謎のくねくね踊りが一時期だけバズり、俺らがブラジルに行く羽目になる話は、また今度。

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ひなまつりのネタ流しは海を越える かたなかひろしげ @yabuisya

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