小さくて重い
西添イチゴ
一
「え? もしかしてキリスト教じゃ、人って
「しないよ。人間は一回生まれてきて死んだら、最後の審判を受ける。そしたら天国に行くか地獄に行くかして、おしまい」
ミヨシ君は、「おしまい」と言ったときに、胸の前でパチンと両手を合わせた。〈なーむー〉。というのは、ぼくの心の声。
「それって厳しくない?」
「なにが厳しいの?」
「いやだって、チャンスは一回ってことでしょ?」
「チャンスってなにが?」
「最後の審判で天国にいけるかどうか……」
「ああ」と言ったミヨシ君は、険しい顔になって、黙って考え始めた。
ぼくはミヨシ君の言葉を待つ。ぼくはミヨシ君のこういうところが好きだ。ぼくがいったいどういう動機でこういう話題を振っているのか、彼はぜんぜん詮索せずに、ただぼくの言うことをちゃんと受けとめて、よく考えて答えてくれる。
「ちょっと待ってね」と言って、ミヨシ君は顎に手をやって、目を瞑って、頭を右に傾けたり左に傾けたりしながら、一生懸命考えてくれている。
ぼくは慣れているので、ミヨシ君に返答を急かさない。ぼくも一緒になって考えてみる。
仏教には、輪廻という考え方がある。ぼくはぜんぜん信心深くはないけど、家に仏壇はあるし、一応仏教徒っていうことでいいかなって思っている。まあ、神棚もあるんだけど。
一応仏教徒のぼくは、キリスト教徒とは違って天国を目指しているわけじゃない。
だからぼくの頼みの綱は、
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