怠惰な観測者と呪われた絵画

@subject_214

第1話 6枚の絵画と1人の青年

 とある美術館の奥に、赤い壁に飾られた6枚の絵画が飾られている。その絵画にはいくつか噂があった。


 ――その昔、北の魔女を怒らせた6人の人間が絵画に閉じ込められたとか。

 ――その絵画に描かれた人間たちの声を聞くと呪われるだとか。


「でもね、この声を聞いても呪われない、耐性の強い人間っているんですよ。貴方みたいにね」


 はいこれ、とリリス渡されたのは1枚のカードだ。そこには彼――ニコラスの顔写真と名前が記載されている。どうやら社員証のようだ。


「最初に君を見たときは、あぁいつも通り呪われた人間が出てきたなと思いましたけどね。君、彼らの声を聴いてなんて言ったか覚えてます?」


「いや、なんて言ったかな」


「『よく寝れそうだな、録音しても?』ですよ。君、絵画が喋ってるのにASMRの音源にしようとしたでしょう?君なら絶対、大丈夫だと思いましたね」


 あぁ、着きましたよ。この部屋です。リリスがカードをかざすと、ガチャンと重い音が鳴り響いた。

「電子キーにしてるのに、呪われた人は何故か入れるんですよ。まぁ貴方は魅入られた人の方が適切なのかもしれないですけどね」


 リリスが部屋の照明を点ける。大小さまざまな大きさの6枚の絵画が扉を開けた正面に飾られており、それらが不気味に照らされていた。

 絵画はドーム状に並んでおり、そのちょうど真ん中にあたる位置に椅子がある。


「君には今日からこの絵画の前で警備をしていただきたいと思います」


「警備?僕ははあまり強くはないですよ」


「必要なのは精神力です。腕っぷしなんて求めていないですよ、貴方、私より弱そうだし」

「貴方はこれから9:00の開館から16時の閉館まで、この絵画を見張ってて欲しい、もっと言えば饗してほしいんです。彼らが退屈しないように、北の魔女が来るまでね」


 それでは、と部屋から出ようとするリリスをニコラスは呼び止める。

「前の警備員はどうなったんですか」


「あぁ。1週間したら来なくなってしまいましたね。その前は3日、その前は5日で音信不通です。――その後ニュースで見ることも多いですよ」


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