第5話 “火花”のフレイ

「はい注目ー、今日から皆さんの仲間になる、アル・バスカー君です、拍手ー」

 ここは学園の校舎、教室棟の二階にある2年生の教室だ。

 教師による紹介とクラスメートの拍手で迎えられる。

 教室のどこを見ても皆、身なりの良い男女ばかりで、流石は国内きっての学び舎といったところだ。

 僕のような田舎の、しかも没落貴族の長男が居るのは場違いだろう。

 あ、ガイアみっけ。同じクラスだったのか。


「アル・バスカーです。どうぞよろしく。」


 ペコペコと軽いお辞儀と、笑顔を振りまく軽い自己紹介の後、示された席につく。

 隣は女の子で、深い青の長髪と、対照的な赤い瞳。きりりとした表情が、聡明な印象を与える美少女だ。 

 少ししてHRが終わると、横からその子が話しかけてきた。

 

「私、フレイ。よろしく!」

「僕はアル。こちらこそどうぞよろしく。」

 

 軽く握手を交わす。

 向こうから話しかけてくれるとは、嬉しいことだ。

 

「早速で悪いんだけど、次の授業、私とペアになって欲しいの」

「それは構わないけど……なんでだい?」

「それはね……」


 少しして、学園の中庭。

 

「決闘の授業だからよ!」

 木剣を眼前に突き付けられ、思わず仰け反る。


「け、決闘ぉ!?」

 確かに聞いていた。

 実技授業で、決闘の科目があること。だがこうも早く体験することになるとは。

 

「そう!もう同じ学年に私が勝ってない人、誰も居ないのよ」

 同じ学年に……?つまり、それって……。

 

「えっ学年で一番強いのぉ!?」

 大袈裟に驚いて見せたが、実は既知の情報だ。

 フレイ・カルバドス。王国の根幹〈四大貴族〉の1つに名を連ねる〈カルバドス〉の令嬢、通称“火花”のフレイ。

 〈カルバドス〉は特に武勇に優れた一族で、その戦いぶりは烈火のごとし……らしい。

 その遺伝子を受け継いでいるのだ、学年いちの強さだって不思議じゃない。

 ……というのを、さっき移動中ガイアに聞いた。彼女のファンなんだろうか。

 

「相手してないのは、今日やってきたアナタだけってワケ」

 学園に来て初日、突きつけられた挑戦状。

 そのうえ相手は学年トップの強さと来た、これは一体どんな不幸……いや、むしろ幸運か?

 

「さっき「構わない」って言ったものね?」

「ああ……言ったなぁ……」

 手強い相手は大歓迎だが、もう少し準備の時間が欲しかった。若干の後悔。

 

「オイオイオイ、死んだわアイツ」

「行けーっ 学年首席!」

 

 クラスメートのヤジがうるさくなってきた。

 プレッシャーだ、しんどいぞこれは。

 

「さ、始めましょ?」

 長い木剣を肩に担ぎニッコリと不敵に笑う、それでいて可憐な笑顔が、今はまるで悪魔のほほ笑みのようだ。

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