アイドルとしては泣かず飛ばずなのなんとかしたいの

「アイドルとしては泣かず飛ばずなのなんとかしたいの」


「そりゃあ、多少顔はいいですが、歌唱力とダンスが壊滅的に下手くそですからね。まあ、貴方は芸人適性が高いのですから、いっそのことアイドルを辞めて芸人一本でやるのはどうでしょう?」


「あたしはかわいいアイドルを目指しているの! あたしはこんな無様な姿を晒すために芸能界にいるんじゃない!」


「山崎さん、理想と現実を理解しましょう。世間に求められている山崎さんはリアクション芸です」


 あたしは山崎ひなた。今はプロデューサーと方向性の違いで揉めている所だ。


「現に、先日の熱湯風呂は大好評でした。あの人間とは思えないような表情、なかなか出せないですよ」


 誇らしげに語るプロデューサー。それを見てあたしは『この人身限るか』と決心した。


 プロデューサーはあたしのかわいいを理解してくれないだろう。


「プロデューサー、あたしプッツンしちゃった。契約解除しよ」


 そのあと、プロデューサーは必死に引き留めてきたけど、あたしは意にも介さず数ヶ月後、無事にプロデューサーと縁を切ることに成功した。

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