一昨日八つ裂きにしたクリスマスがひな祭りになって帰ってきた

　一昨日八つ裂きにしたクリスマスがひな祭りになって帰ってきた。

　何を言っているのか分からないと思うが聞いてほしい。

　一昨日八つ裂きにしたクリスマスがひな祭りになって帰ってきたのだ。

　八つ裂きにしたクリスマスツリーが雛人形に……とかそんな話ではない。

　詳しい話を聞いてほしい。

　――数ヶ月前。

　世界各国の首都にゾンビが現れた。

　あっという間にゾンビアポカリプスとなってしまった世界で、私は何とか生きていた。

　と言っても、私が暮らしているのは田舎と都会の中間のような場所。

　畑とマンションが隣接しているような場所のため、比較的安全に食料調達ができる。

　それに、ゾンビは階段を上る事ができないようで、マンションの上階に居れば襲われる心配は無かった。

　それでもまぁ……死んでいく人は死んで行ったが。

　ゾンビアポカリプスにも慣れ、畑横の倉庫から頂戴した苗やら種やらをベランダで育て、時々ゾンビの動きが鎮まっている隙に近所のスーパーやらなんやらで必要物資を集める日々。

　ゾンビは腐乱死体なだけあって、武器さえあれば撃退出来ることも分かった。

　包丁をほうきの柄に結び付けた簡易的な薙刀、DIY趣味のご近所さんが遺したノコギリ、某漫画でも活躍した最強の武器スコップetc……。

　これさえあれば負け無し！

　という所で、ゾンビ達が少しずつ進化を始めた。

　例えば赤いゾンビ。

　こいつは無力化すると数時間後に爆発する。この爆発に巻き込まれたゾンビは赤ゾンビと化して数が増えて行く。

　例えば濃い緑のゾンビ。

　こいつは無力化しても数時間で再生して分裂する。

　特性を繰り返す度に色が薄くなり、普通のゾンビに戻るのだが、そこまで辿り着くにはかなりの時間を要する。

　何度もコイツらのせいで人が死んだ。

　そうして10日前。

　濃い緑のゾンビと赤ゾンビが群れを成してマンションを襲撃した。

　クリスマスカラーなヤツらだった。

　互いの身体を踏み台に上へ上へと登り、階下で見張りをしていた人や、偶然外から帰ったばかりの人などを踏み潰しながらやって来る。

　私含む、戦闘力に自信のある数名でヤツらを八つ裂きにし、分裂したり爆発する前に力自慢が外へと投げ捨てた。

　そうやって、私達は七日間ゾンビ共と戦い続けた。

　何度も死にかけながら……いや、何人も死んだ。

　一昨日、最後のクリスマスカラーなゾンビを八つ裂きにし、我々は平穏を取り戻した。

　生き残ったのは、私含めたったの６人。

　元は30人の避難者が生活していたと言うのにだ。

　疲弊しきった我々に――しかし休む時間は与えられないらしい。

　先日倒したゾンビ共が復活し、薄緑とピンクのゾンビが階下を彷徨いている。

　まだヤツらが階段を上る気配は無い。

　しかし、新種の白いゾンビが混ざっているのが確認された。

　ピンク白緑の蠢く彼らの姿は、さながら菱餅。

　奇しくも今日は３月３日。

　ひな祭り。

　一昨日八つ裂きにしたクリスマスがひな祭りになって帰ってきた。

　しかし、だからなんだと言うのだ。

　新種のゾンビがどのような動きを見せるかは分からない。

　だが、生き残った我々には、これから先も生きていくという使命がある。

　武器を取り、立ち上がる。

　命の果てるその日まで、我々は戦い続けるのだ！