釣りの最中

椿 恋次郎

釣りの最中


 いい木材ってのは良く乾燥してるってのが肝要だ。


 なんだい藪から棒にだって?


 なんだかぼうっとしてるから棒の話でもしてやろうかと思ってな。


 どうせ昨日今日始めたばかりの釣りなんか暇で仕方がないってもんよ。


 ちょいと気の利いた話でもしてりゃあ魚だって寄って来るかもしれんだろ?まぁ聞きなさいよ。


 薪にしたって碌に乾燥してない生木なんざぁ燃やした日にゃ煙が出るばっかりで全くもって使えねぇって話だ。


 家を建てるのだって柱に使う木材なんかは年単位で乾燥させるからこそ長く持つってもんらしいからな。


 それもただ単純に乾かすだけだと反ったりヒビが入ったりで中々に手間のかかる仕事なんだってよ。


 何でも乾かすのに海ん中に沈めて乾かすなんて手法もあるんだってな。


 嘘じゃ無いって、木材の芯の芯まで海水が入り込む事で元々偏って詰まってた樹液やら何やらの水分を全体的に均等にしちまうんだってよ。


 年単位で海に沈めた木材を引き上げて、これまた年単位で乾かすと何百年も持つ建築物に使われるような柱になるって話だ。


 すげぇよな。


 まぁ昔は何でも木で作ってた様な感覚はあるから、そりゃあ色んなノウハウってのがあるんだろうな。


 釣り竿だって今じゃカーボンだグラスファイバーだなんてのが当たり前だけど、昔は木の棒だったって言うんだからよう。


 それも良く乾燥させて漆を塗ったり色んな手間暇かけて折れずに良くしなる、謂わば工芸品とも呼べるようなモンまで作ってたって言うじゃないか。


 今はカーボン、と言えばゴルフクラブのシャフトも昔は木の棒だったらしいな。


 ヒッコリーってのはクルミだったか?そんなもんでゴルフボールぶっ叩いてよく折れないよな。


 弓矢なんぞ弓も矢も両方とも木材だな。


 和弓なんかは弓は芯になる木材に竹を貼り合わせて強度を出してるし、矢は真っ直ぐに加工した竹を使ってるよな。


 いずれも乾燥させてからの加工で丈夫で精密な道具に仕上がってるってなもんだ。


 え?なんだって?全部どっかで聞いてきたような話じゃないかって?


 そりゃそうだ、木の聞いた話ってヤツだからな。


 ひなまつりに暇な釣りしてる最中にはちょうどいいってなもんよ。


 で、感想はどうよ?


 え?乾燥だけに乾いた笑いしか出て来ないって?


 こりゃ一本取られたね。



 

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