第2話 猫はダンス大会で天下無双する
「ありがとうございました! では次、エントリーナンバー――!」
ステージ上の司会者がエントリーしている参加者の名前を呼ぶ。
「ホントでしょうね」
ショートカットの美少女女子高生が踊りながら訊ねた。
「ホントだって。この大会で優勝した人と、最後まで踊っていた人に一ヶ月分、両方の条件達成したら一年分よ」
長い黒髪の女子高生――武蔵野綾が答える。
綾は壁際の椅子に座っている。
彼女は踊る気がないらしい。
「もうダメ」
近くにいた二十代の女性が踊るのをやめるとフロアを出ていく。
長い黒髪の女子高生が辺りを見ると最初は混雑していたのに今は大分空いていた。
「――さん! 山田さん、いませんか!」
ステージの上の司会者が名前を呼ぶが誰も出てこない。
今の二十代の女性と同じくバテて帰ったのだろう。
あるいは、今の女性がそうだったのかもしれない。
何時間も踊り続けた上でステージでダンス対決というのはかなり体力を使う。
「では、次! 白井さん! 白井美香さん!」
「行ってくる」
ショートカットの女子高生――白井美香がステージに向かう。
「勝者、白井美香!」
司会がそう言うと負けた女性が肩を竦めてステージを降りた。
「では青山由美さん!」
司会に呼ばれて女子大生風の女性がステージに上がる。
女子大生はかなり切れのある動きをしていた。
だが美香も負けていない。
やがて――。
「勝者、白井美香!」
司会が言った。
女子大生がステージを降りると別の女性の名前が呼ばれる。
「こんなところで何をしておる」
和装の青年が綾に訊ねた。
「見て分からない? ダンス大会よ」
「人間じゃなくてもいいのか?」
「人間限定なんて書いてないでしょ」
綾が壁のポスターを指す。
「それは
青年が呆れ顔で言った。
「しかし、あやつ、以外と上手いんだな」
「そりゃ夜だし」
「猫は夜踊るというのは聞いてるが上手いとは限らないだろ」
綾が肩を竦める。
「勝負あり! 優勝は白井美香さんです!」
「イェーイ!」
「最後まで踊っていたのは美香さんだけなので、美香さんが天下無双のダンサー賞です!」
「やったー!」
「では、これが商品です!」
司会が合図するように言うと――。
トリの降臨!
巨大な鳥のハリボテがステージに降りてくる。
司会がその鳥が羽で持っているカードを取ると美香に渡す。
「じゃあ、早速今日から!」
美香が司会にカードを付きだす。
「ご注文はあちらで」
司会がカウンターの方を指すと美香が聞きとしてそちらに向かう。
「賞品はなんだって?」
「ローストチキン食べ放題一年分」
「食べ放題……では一年経たずに潰れるであろう」
「でしょうね」
綾が美香を見ながら言った。
猫又なのだ。
一度に食べる量は人間の比ではない。
*
「満腹~!」
美香は部屋に入ると幸せそうな表情で布団に倒れ込んだ。
一週間後に店が潰れるとはつゆ知らず――。
東京の空の下 ~短編集~ 月夜野すみれ @tsukiyonosumire
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