第45話 衣装を作ってきたぞ!

【宮城翔】


 翌日、登校していると、後ろから真に声を掛けられた。

 「オッス!翔!」

 

 真に、思いっきり肩を叩かれた。

 真は、左手にキャリーバックを引いていた。

 目にクマができている?でもテンション高いな、真。

 

 「キャリーバックに何が入っているの?」

 

 「昨日約束していた衣装だ!楽しみにしてろよ!」

 

 本当に作ってきたのか。

 校門の前に立っている先生方にも真は、挨拶をしていた。いつもはしないのに。

 やっぱり今日は機嫌がいい。真の声は弾んでいた。

 

 教室に入ると、

 「末広、約束の衣装作ってきたぜ。末広は、うちきだったな。試しに作ってきたモンだから完璧じゃねぇけど、どうだ?」

 それは、3重に重ねられた着物だった。内側は、薄緑の着物、真ん中は、薄い桃色、外側は薄い紫色の下地に白い藤の花の模様がある着物を、重ねたものだった。

 

 末広さんは、びっくりしながら、

 「綺麗な藤の花の着物ね。この布地どうしたの?」


 「オレのおばあちゃんの残してくれた布地だ。」

 

 「工藤のおばあさん?」

 

 「オレのおばあちゃん、昔、着物呉服店やってたんだよ。そのときの着物の布地がかなり残っているんだ。」

 

 「じゃ、工藤は、仕立てもできるの。」

 

 「当り前だ。小2のときから、おばあちゃんと一緒に服を作ってたんだぜ。実は、この生地、浴衣用の生地でさ。そんな高くないぜ。」

 今までに見たことがないくらいのドヤ顔をしていた。

 

 「え、本当?」

 末広さんは、驚いた顔で、真を見ていた。俺も、和服の布地については、良く知らないが、とても高い布地だと思っていた。

 

 「次は、壺装束つぼしょうぞくだな。宗方、作ってきたぜ」

 それは、同じく緑色の布地で作られていた。何よりも驚いたのは、笠だった。笠は、良く見ると麦わら帽子だった。それに、レースのカーテンのような布が掛かっていた。

 

 「傘は、麦わら帽子を買ってきて作ってみた。もちろん、この白く透けて見える布は、カーテンのレースだ」

 

 宗方さんは、

 「工藤ありがとう。すごく良くできている。とてもきれい。」

 と、喜んでいた。


 他の女子も

 「凄い!」

 

 「工藤ってただの危ないやつだと思ったけど、衣装作りは上手なんだ!」

 

 「でも、一日で作れるって少し怖くない。しかもぴったり良くできている。」

 色々な反応が出ていた。


 「おい!!オイオイオイオイオイオイ!!これくらいで驚いていちゃキリがないぜ。いよいよ本番だ!!」 

 驚いているだけじゃないけどな。

 

 「巫女さんだ!加藤!」

 加藤さんは、具志堅さんの後ろに隠れて、前に来た。加藤さん、ブレないな。

 

 「まだまだ、完成形には遠いけどな。」 

 

 具志堅さんが、

 「加藤さんが、『工藤君素晴らしい。人は見かけによらない。』と言っています。」

 そういって、具志堅さんがイラストを真に、渡した。


 真は、一目見るとそのイラストを高々と掲げた。

 「どうだ!!オレのイメージと加藤のイラストは、同じだ!!」

 

 そのイラストは、顔は、佐々木さんだったが、色のついた綺麗なイラストだった。驚いたのは、巫女の服の赤の袴だった。色といい、紐の結び目まで、そっくりだった。加藤さんのセンスと真のセンスは似ている?

 

 工藤が、

 「みんな、色々な生地を持ってきてくれ!着なくなった服でもいいぞ!使わくなったバックとかでもいい!鎧を作るのに使うからな!」

 

 「すごいとは思うけど、やっぱり尊敬できない。」

 今のは加藤さんだな。

 

 加藤さんが、

 「みんなが持ってきた布地に合わせて、デザインを描くから、楽しみにしていてください。」

 と続けた。加藤さんは、真以外なら直接話せるんだな。

 

女子が集まって、真の作ってきた衣装を確認していた。みんなそのクオリティの高さに驚いていた。

 「工藤君、ここのところどうやって、作ったの?」

 「縫い方教えてね。」

 「任せてくれ!!」

 みんなの質問に、真は、誇りをもって嬉しそうに答えていた。


 良かったな、真。


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