【KAC20251】今年のひなまつりは終了しました。
花沫雪月🌸❄🌒
今年のひなまつりは終了しました。
これは10年前、私が7つの頃、父方の祖母に連れられて高知県のある神社に行くことになったお話です。
その頃、既に父と母の仲は最悪といってもいい程で、私は父の実家に一時的に避難のような形で、半ば引き取られるように暮らしていました。
原因は……一応、母の浮気だと聞いています。
毎日のように言い争いが絶えない上、母もヒステリックな性質で、喧嘩の度に皿が壁にぶつかって割れるような有り様でした。
結局、親権は父のものになったようです。
まぁその父も実家に私を預けてほとんど顔を出さなくなりました。
再婚して子供もいるんだとか。
けれど、そうなったのにはどうやら神社の件が関わっているようなんです。
神社ではお祓いというか、儀式のようなものをしてもらったんですけど、その儀式が“ひなまつり”というんです。
あの女の子のお祭りじゃなくて、漢字で書くと卑しい名前を奉ると書いて卑名奉ですね。
神様に古い卑しい名前を奉って、新しい名前を戴く。
そうして新しい人生を歩む為のものなんだそうで、一種の縁切り……みたいなものでしょうか。
効果は覿面で父とも母とも縁が切れたように全く関わりが失くなってしまいました。でも不思議とそれが悲しくないんですよ。本当に新しい人生を戴いたみたいで。
その時に戴いたのがヒナコ……今の名前ですね。
その後、祖母からの薦めもあってあのNPO法人の職員として働かせていただいて……。
えっ? はい? ひなまつりで戴いたのがヒナコという名前なのが面白い? そう言われてみるとそうですね。
え……弟? ですか? 私に弟はいないはずですけど……写真? いえ、見覚えありません知らない人です。
§
以上が一年前より行方不明届けを出されていた■■市の高校生、佐々木遥菜氏へのインタビュー記録になります。なお対象は自身をヒナコという名前で認識していました。また、彼女の他に7名の10代後半~30代前半の女性が同じ宗教法人『トリの降臨』の施設より保護されていますが、その全員が自身をヒナコであると認識しておりほぼ同一の経歴を語っています。
え? はい、そうです。
全員が全員、7歳頃に親の不仲で父方の祖母に引き取られたと述べています。
発見の経緯ですか?
佐々木氏……あぁ弟さんの方ですが、彼が行方不明だと思われていた姉によく似た人物を偶々発見したことが発端です。
警察機関への通報を受け、我々が知るに至りました。
ここからは私の見解になりますが……これは何らかの要因により記憶、あるいは人格の上書きが行われたものだと考えられます。
それが卑名奉という儀式によるものであると考えられますが、その詳細はわかっていません。
ですが私としては卑しい名を奉るというその名付けに違和感を感じます。
奉るとは神、あるいは目上の者に何かを施すとそういった意味になりますが、卑しき名はある種の穢れに近いと考えられます。
すなわち奉るのではなく祓うのが正しいはずです。
それでも、マツルという呼びが正しいとするならその意味が違うはずです。
ひなまつりをヒナとマツリに分けるとするならば、このマツリの部分。
おそらく、抹るではないでしょうか。
抹の字には、塗りつぶすという意味があります。
すなわち、ヒナにより塗りつぶす……。
ひなまつりとはそういう儀式であると愚行いたします。
え? 私が誰か……ですか?
そんな話し方をしなかったはず?
はい、えぇ、私ヒナコと申します。
【KAC20251】今年のひなまつりは終了しました。 花沫雪月🌸❄🌒 @Yutuki4324
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