藤原超子/ハランシスク・スラザーラ
青切 吉十
自分の理想の異性を創作する愉しみ
藤原超子という女性をご存じだろうか?
下の名は、ちょうこ、もしくは、とおこと読む。
私は、原作夢枕獏、作画岡野玲子のマンガ「陰陽師」で知った。
作中のスーパースター安倍晴明に、一目置かれる女性として、超子はちらりと登場する。
歴史上では、冷泉天皇に入内し、三条天皇を産んだ女性として知られている。藤原道長の姉と言ったほうが早いかもしれない。
私が超子を特別視するようになったのは、マンガ「陰陽師」の気品あふれる描写もあるが、いちばんの理由は、その死に方である。
Wikipediaによると、『庚申待の明け方、脇息に寄りかかったまま眠るようにしていつの間にか息絶えていたという。超子の卒去後、兼家一門では庚申の催しを行うことはなかったという』とある。
ちなみに、広辞苑によると、庚申待(こうしんまち)は、『庚申の夜、仏家では帝釈天および青面金剛を、神道では猿田彦を祀って、一晩中起きている習俗』とある。
超子の享年ははっきりしないが、29のようだ。
実に神秘的な死に方で、アマチュアの物書きとして、個人的にぞくぞくした。想像力を掻き立てられた。こういう人物、言い換えれば、こういう死に方をする女性を、自分の小説の中で登場させたいと思った。そこで、私のカクヨムの代表作にしている「スラザーラ内乱記注解」にハランシスク・スラザーラというお姫さまを登場させたのだった。
ハランシク・スラザーラは私の理想の女性を具現化した存在である。
非常な癇癪持ちで、完全な理系脳。歌舞音曲は愛さない。平凡な顔立ちで化粧や鬘を好まない。世間知らずでわからないこと、めんどうくさいことは、すべて家臣のノルセン・サレに任せきり。
しかし、生まれ持った気品とカリスマ性を持ち、理不尽な申し出を時の権力者に強いる。
そういう女性を私は描きたかった。そして、超子のような死に方をさせたかった。
「スラザーラ内乱記注解」は、架空の歴史書という態で書いた。出てくる登場人物は駒で、キャラクターを前面に押し出す書き方はしなかった。
しかし、ハランシスク・スラザーラ、通称「公女」は、読んでくださった方からたいへん好意的に受け止められ、寄せられたコメントでも、彼女に言及したものが多かった。ずいぶんとかわいがってもらった。
そのハランシスク・スラザーラを殺すのは勇気のいる作業であったが、言うなれば、彼女を殺すことこそが、長い小説(60万字)をわざわざ書いた目的であったから、予定通り、超子の死をなぞらせる形で殺した。読み手の評判はあまりよくなかったと記憶している。
さて、まとめだが、創作活動とはおもしろい営みだとは思わないか?
読んだ小説やマンガに理想の異性が出てくることもあるし、出てこなければ自分で創り出すこともできる。
そういう楽しみ方のある「娯楽」である。
最後に宣伝になるが、そんなハランシスク・スラザーラが活躍する「スラザーラ内乱記注解」、よければご覧あれ。
「スラザーラ内乱記注解」
https://kakuyomu.jp/works/16816700429268114907/episodes/16816700429268187909
ではでは~。
藤原超子/ハランシスク・スラザーラ 青切 吉十 @aogiri
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