最終話

そういって彼は、あの日口からのぞかせた八重歯、吸血鬼の牙で己の舌を噛んだ。


「さよならだ、雫。俺を死なせてくれてありがとう」


そして、今までで一番優しく私に触れて、そっと私に口づけた。



そのあとの記憶はほとんどない。気絶したように眠りこけた私は、目を覚ましたときには、ロゼと出会った頃よりも元気な姿になっていた。


それからただひたすらに泣いた。

ただただ声をあげて子どものように泣いたことだけを覚えている。




…―――――



「おばあちゃーん、どうしたの?」

「ん?少しね、昔のことを思い出していたの」

「そっかぁ」

「ほら、ママのところに行っておいで」

「うん!」


もう、一度経験したからわかる。

私は、今日、恐らく死ぬ。

あれから半世紀ほどたった。

もうすぐ、あなたに逢えます。夫だった人より先にあなたの顔が思い浮かぶなんて罪な女かしら。

はやく逢いたいね、ロゼ。









fin

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あなたの殺し方 @setsunajuri

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