最終話
そういって彼は、あの日口からのぞかせた八重歯、吸血鬼の牙で己の舌を噛んだ。
「さよならだ、雫。俺を死なせてくれてありがとう」
そして、今までで一番優しく私に触れて、そっと私に口づけた。
そのあとの記憶はほとんどない。気絶したように眠りこけた私は、目を覚ましたときには、ロゼと出会った頃よりも元気な姿になっていた。
それからただひたすらに泣いた。
ただただ声をあげて子どものように泣いたことだけを覚えている。
…―――――
「おばあちゃーん、どうしたの?」
「ん?少しね、昔のことを思い出していたの」
「そっかぁ」
「ほら、ママのところに行っておいで」
「うん!」
もう、一度経験したからわかる。
私は、今日、恐らく死ぬ。
あれから半世紀ほどたった。
もうすぐ、あなたに逢えます。夫だった人より先にあなたの顔が思い浮かぶなんて罪な女かしら。
はやく逢いたいね、ロゼ。
fin
あなたの殺し方 @setsunajuri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます