花火大会 4

それからしばらく歩いた。


先輩はどんどん高台の方へと足を進めている。周りの景色も、人混みから植物に変わっている。


どこにいくんだろう…。


その間にも、花火大会の開会を知らせるアナウンスは町中に響き渡っていた。



『先輩……』


「大丈夫、あとちょっとだから。」



私の不安な気持ちが伝わったのか、大丈夫と言ってくれる。



先輩を信じてじっとしていると、急に立ち止まった。



「着いたよ。」



そう言われた場所は、公園の大きな桜の木の下だった。ここはあまり人が来ない穴場のようなところだと聞いたことがある。



『ここって…』



昔、まだ小学生だった頃によく来てた公園にそっくりだった。



「乃蒼ちゃん、こっち見てごらん。」



先輩に言われた方へ顔を向けると、綺麗な夜景が広がっていた。これが私たちが住んでいる町だと言われると、ピンと来ないくらいだ。


ドォン


ついに花火大会が始まったようだ。

川沿いから打ち上げられた光は、星の輝く夜空に大きな花となって消えていく。


…今までなんで気づかなかったんだろう。


こんな綺麗なものだと知っていれば、毎年花火大会に行ってたのに…。


次々に打ち上がる花火を眺めていると、隣に先輩が座ってきた。



「綺麗でしょ?乃蒼ちゃんに見せたかったんだ。」



先輩の優しさに、感動を隠せない。



『私も先輩と一緒に見れて嬉しいです…』


「…蒼生。」


『え?』


「2人の時はそう呼んでくれるって言ったじゃん」


『あ、蒼生…///』


「ん?」



先輩、やっぱり反則です…。


随分冷静だなぁと思って先輩の方をちらっと見ると、花火を見つめながら


……耳が赤くなっていた。



花火が終わり、再び蓮と徳島先輩と合流した。


2人は河川敷で近くから花火を見たらしい。周りに人も結構いて、カップルで来てる人も多かったみたいだ。



『乃蒼ちゃんはどうだったの?』



声を潜めて、徳島先輩が尋ねてきた。



『た、楽しかったです!』


『おー、よかった!何かあったりした?』



何か…?


するとさっきまでの記憶が一気にフラッシュバックする。


思わず顔が赤くなってしまった。



『ふふっ、その様子だと蒼生も頑張ったんだね』


『な、なんにもなかったですー!』


『照れない照れない』


『そう言う先輩はどうだったんですか?』


『え、私?!な、何もなかったよ?』



…そんな頬を緩ませて言っても、バレバレです先輩っ!



『見てましたよ?楽しそうでしたね?』


『えっ!見られてたの!?超恥ずかしい//』



もちろん嘘だけど、先輩の反応からして大体の想像はつく。


そして私たちは帰路についた。


実は毎年、家族で手持ち花火を楽しむので徳島先輩と一ノ瀬先輩を連れて家に帰る。


4人で花火を見れなかった分、ここで一緒にみようと思う。


…規模はだいぶ小さいけれど。



「乃蒼!バケツに水汲んできてー。」


『はーい。』



蓮に指示され、バケツを持って川の方に向かう。毎年、水を汲むのは私の仕事なのでかなり手慣れている。



「俺も行くわ。一人で夜道は危ない。」


「じゃあよろしくなー、蒼生ー。」



と言うことで2人で水を汲みに行くことになった。

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