第13話
私はデスクに近付き、ワイシャツ姿の先生の肩に白衣を羽織らせました。それから、黙って、先生の横顔を見つめました。
悪い夢を見ているのでしょうか、先生は苦しそうに眉根を寄せていました。その目の下には濃い隈が浮かんでいます。普段はきっちりと梳き上げられた前髪が、机の上に乱れて広がっています。右手の指が、ボールペンをゆるく挟んだ形で投げ出されていました。
(あ…駄目…また…)
私の胸の奥から、痺れるような強烈な感覚が噴き上げてきました。それは溶岩のように熱く、私の理性を熔かそうとします。
(どうして…私…無理だと判ってるのに…)
婚約者がいると聞いた時から、心の底に芽生えた理不尽な願望。いつも必死で押し殺している感情。
私は、震える手を伸ばし、そっと先生の髪に触れました。
不意に、先生がわずかに身じろぎしました。
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