第12話

それから2ヶ月が過ぎた、ある日の診察時間後のことでした。

私は病院内を回って細々とした雑用を済ませ、精神科に戻ってきました。

「草馬先生、薬剤部に出した書類のことですけど…あら?」

診察室を覗きこんで、私は足を止めました。

…草馬先生が、カルテの散乱するデスクに頭を伏せて、眠っていたのです。

他のスタッフは既に帰っていて、診察室はとても静かでした。先生のかすかな寝息だけが響いていました。

(先生…疲れていらっしゃるのね…)

精神科は、医療従事者にとってもストレスの溜まる職種です。研修期間を経たとはいっても、経験の浅い若い医師にとって、心を病んだ患者を診るのはどんなに緊張を強いられる毎日であることでしょう。生真面目で献身的な性格の草馬先生には、なおさらに…。

(風邪ひきますよ…草馬先生…)

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