⑦ ランナーに関する言い回し

第33話

バッター(打者)がヒットやエラー、フォアボールなどで塁に出ると「ランナー(走者)」となります。

ランナーは、相手ピッチャーの集中力を分散させ、チャンスを少しでも拡げるために、盗塁などを仕掛けます。

野球というスポーツにおいて、最もスリリングでワクワクするのは、塁にランナーがいる場面での双方のチームの駆け引きと言えるでしょう。



① 「得点圏(とくてんけん:スコアリング・ポジション)」


「野間のツーベースヒットで、カープは得点圏にランナーを置きました。そして次のバッターは得点圏打率3割8分の菊池!」などという実況が流れることがあります。

この「得点圏」とは「次のバッターがヒットを打てば、ランナーが本塁に戻ってくる(=得点が入る)可能性が高い状況」という意味ですが、ざっくり言えば「2塁か3塁にランナーがいる状況」です。


プロ野球選手の走力ならヒットの間に2塁から3塁を回って本塁に戻ってこれるでしょ、ということらしいんですが、いやまぁ、俊足の野間選手なら分かるけど、鈍足の松山選手だったら難しいんじゃないかなぁ、なんて野暮なことは考えなくて結構(;^ω^)


この状況は攻撃側にとってはチャンス。応援団はチャンステーマを吹き鳴らし、ファンは声を張り上げて応援する胸躍る場面です。



② 「打率」「得点圏打率」


「打率」とは、その選手がバッターボックスに立った回数のうちヒットを打った数の割合(安打数÷打数)です。

テレビや新聞などでは「0.333」などの形で表示しますが、ラジオ実況では昔から「3割3分3厘」などと言い表します。この打率が3割を超えると良いバッターとされます。

その中でも、得点圏の場面でヒットを打つ確率を「得点圏打率」と言い、この数値が高い選手は「チャンスに強い=頼りになる選手」とされます。



③ 「手から戻る」


ランナーは盗塁のために、次の塁の方向に少しだけ進んで(リードして)います。

しかし、ランナーが本来いるべき塁の上から離れているとき、ピッチャーがその塁にいる野手に球を投げると、それを野手が受ける前までにその塁にランナーが戻っていないと、ランナーはアウトとなってしまいます。これを「牽制」と言います。

そのため、リードを取っているランナーはピッチャーがいつ牽制を投げてくるか常に警戒していなければばりません。そして牽制の気配を察すると、大急ぎで元の塁に戻ります。

この時、ランナーが元の塁に向かって頭から滑り込み(ヘッドスライディング)、手をいっぱいに伸ばして塁にタッチした様子をラジオで描写する言葉が「手から戻りました」。足を伸ばして滑り込んだ様子は「足から戻りました」と言います。

どちらにせよ、ピッチャーとランナーの息詰まる攻防がラジオ越しに伝わってきますね。

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