第44話
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10月25日(札幌ドーム)
北海道日本ハムファイターズVS広島東洋カープ
試合結果:4-3でカープ痛恨の負け(´;ω;`)
既に引退を表明している黒田。この第3戦目が「黒田の投げる最後の試合」になるかもしれないと、大勢のカープファンが札幌ドームに集まりました。
また、プロ野球ファンにとっては「投手・黒田VS打者・大谷」という、セ・リーグとパ・リーグを代表する人気選手同士の対戦ともあって、この試合への注目度はとても高かったのでした。
その黒田は、いつにも増して気迫あふれるピッチングでした。
6回裏、大谷翔平をレフトフライに打ち取って、さすがは黒田、まだまだ健在じゃ、引退なんぞせずにまだカープで投げ続けてくれ、とファンが喜んだ、――その、次の瞬間。
――マウンドの上の黒田が、自分の足に手を添えました。
何かのアクシデントが生じたことを察したコーチが急いでマウンド上の黒田に駆け寄ります。コーチに付き添われて、黒田が治療のためにいったんベンチの奥に戻っていきます。
試合が中断している間、漠然とした不安がスタジアムを包みます。
どうしたんだ黒田、まさかこれで終わりなんてこと、ないよな?
そのファンの心配の声は、すぐにベンチから出てきてマウンドに戻ってきた黒田の姿に、安堵の溜息に変わります。
ああ良かった、たいしたことなかったんだな、本当に良かった…。
そのファンの見守る中で、黒田はコンディションを確認するための投球練習を行います。1球、2球、3球。
3球目の投球練習を終えた黒田は、何かを悟ったように、静かにマウンドを離れ――
――再びベンチの奥へと戻っていったのでした。
結果的に、この3球の投球練習が、黒田の最後のマウンドとなったのでした。
このとき、1塁手の新井は、黒田の足がガクガクと震えているのをすぐ近くで見ていたそうです。
ファンには決して弱いところを見せないけれど、その身体はボロボロで、それでもファンのために1球でも長く、長くと、無理をしながら戦ってきた黒田を知っている新井さん。
「足がつって降板した時点でマウンドに戻ってこられる状況ではなかったと思います。でも僅かな可能性にかけて投球練習に出てきた黒田さんの姿というのが、黒田さんの生き様を象徴する名シーンだと思います」と新井は語ります。
本当は、ちょっとぐらい無理をしてでも、最後まで自分が投げたかった。
しかし次のファイターズの打者は強打者の中田翔。
こんな状態の自分が投げ続けたら、日本一を目指して戦っている仲間達に迷惑がかかってしまう。
だから「無理だ」と思った――と、黒田自身も語っています。
責任感と、強い自己犠牲の精神。
そして何よりもカープというチームを愛する心。
黒田のマウンドは、盟友・新井の目の前で、こんなふうに、最後まで“黒田らしさ”を貫いた形で終わったのでした――
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