6 8月の出来事
第34話
黒田200勝の感動の余韻もさめぬうち、8月2日には新井さんがカープ球団史上4人目の通算300号本塁打(ホームラン)の記録を樹立するなど、嬉しいニュースが続くカープ。
このままトントン拍子に進むのか――と思った瞬間に、思わぬアクシデントが襲いかかります。
その同じ2日の試合中に、石原捕手が負傷してしまったのです。
今季のカープを支えた扇の要。ジョンソン、黒田らが絶大の信頼を寄せ、経験の浅い岡田らの長所を上手に引き出した名キャッチャー。
シーズンの後半戦の、優勝に向かう重要な時期に、うーたんの離脱は本ッッッ当に痛かった…(>_<)
石原不在の間、キャッチャーマスクを被ったのは“アツ”こと會澤。
もちろんアツも優れたキャッチャーなんですよ。しかし、ベテランのうーたんの力量にはさすがに及ばないのか、それともチーム全体がショックで動揺してしまったのか……、真相は分かりませんが、石原離脱後、チームはまさかの4連敗。
それに対し、2位のジャイアンツは絶好調で7連勝。
気がつけば、7月終盤にはジャイアンツとは10ゲーム差もの余裕があったのに、既に4.5ゲーム差にまで追い上げられてしまいました。
そんな絶体絶命のピンチで迎えた8月7日の試合を「2016年のベスト・ゲーム」として、ご紹介しましょう。
***
☆PICK UP!☆
8月7日(マツダスタジアム)
広島東洋カープVS読売ジャイアンツ
試合結果:8-7でカープ劇的サヨナラ勝ち!(ノД`)・゜・。
ジャイアンツとの3連戦の最終日であり、前々日、前日と連敗を喫してしまったカープ。
このまま今日も負けてしまったら、ジャイアンツとのゲーム差は3.5ゲームに縮んでしまう――プロ野球のペナントレースにおいては3ゲーム差なんてあっという間にひっくり返されてしまいます。
ましてや、野球の神様はとってもシビア。こういう大事な試合を落とすようなチームには二度と微笑んでくれません。
そんなことは当然、カープの選手達は充分に分かっています。
まず、このピンチをどうにかしようと動いたのはアツでした。2回裏に3ランホームランを放ち、必死で勝ちをもぎ取ろうとします。
しかし対するジャイアンツは現在ノリに乗っている状態。すぐさま同点に追いつかれてしまいます。
その後も突き放そうとしては追いつかれ、何だかジャイアンツの手のひらの上で踊らされているような、そんな息苦しさを感じる試合でした。
そして最後の9回裏、スコアは6対7。1点差で負けている…。
1点でもいい、何とか得点が欲しい――マツダスタジアムを包み込むファンの祈りもむなしく、あっさりと2アウトまで追い込まれてしまいます。
ああ、やっぱりダメなのか。
今日もやっぱり負けてしまうのか。
このままジャイアンツに追い抜かれてしまうのか。
やっぱり優勝なんて夢のまた夢だったのか――
――ファンが絶望しかけた時、バッターボックスに入ったのはキク。崖っぷちに追い詰められても、この男は絶対に諦めません。
ジャイアンツの守護神・澤村が投じた初球に喰らいつき、値千金のホームランを放ちました!
これで同点。
ホッと胸を撫でおろし「このまま延長戦に入ればまだ勝機も見えてくるかもしれない」と悠長に考えていた私。
いやいや、なめんなよ。カープの選手をなめんなよ。
延長戦になぞ突入してなるものか。この9回裏で決着をつけてやるんだから――と、選手達の目がギラギラ輝いていました。
続くマルが冷静にフォアボールを選んで出塁すると、その次にバッターボックスに立ったのは、そう、やっぱり新井さん!
すさまじい気迫でバットを振り抜くと、その気迫が乗り移ったかのように打ち返されたボールはレフト前に落ちるヒットに!
1塁にいたマルが全速力でダイヤモンドを駆け回り、ホームベースに滑り込みます。セーフ!試合終了・サヨナラ勝ち!
その瞬間、2塁に向かって走っていた新井さんはグラウンドに片膝をつき、片手を高々と空に向けて突き上げて、豪快にガッツポーズ。
そんな新井さんの元に、選手全員が駆け寄ってきます。その中心にアツがいました。
アツは新井さんに抱きつくと、新井さんもまたアツをしっかりと抱きしめます。
そう、新井さんには分かっているのです。石原離脱後、一番苦しかったのは誰だったのか。4連敗の責任を誰が一番重く受け止めていたのか。
この抱擁の瞬間の2人の表情がとても良いのです。笑っているような、泣いているような、ホッとしたような、色々な想いがこの抱擁には詰まっていました。
この劇的なサヨナラ勝利により、ジャイアンツとのゲーム差は再び5.5ゲーム差に広がりました。
そして、このドラマチックな逆転劇を見届けた野球の神様は、ニッコリと微笑みながら、ある決断を下したのでしょう。きっとそうに違いありません。
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