第11話

②黒田博樹(くろだひろき)【投手】背番号15(41歳)


 漢(おとこ)と書いて「くろだ」と読む。その男気に日本中が惚れた、それが黒田。


 97年カープ入団。カープ暗黒時代と呼ばれた時代を懸命に支えたエースピッチャー。

 06年シーズン中にメジャー行きの権利を獲得するも、広島市民球場に集まったカープファンが掲げた巨大横断幕のメッセージに感激し、その時はメジャー行きを諦める。



我々は共に闘って来た

今までもこれからも…

未来へ輝くその日まで

君が涙を流すなら

君の涙になってやる

Carpのエース 黒田博樹




 要するに「どこへも行かんとずっとカープに居てくれや」という意味なんですけどね。

 ただ、特定の選手に向けた巨大横断幕というのは非常に珍しいもので、どれだけ黒田がカープファンに愛されていたかが分かるエピソード。

 そして、この時のファンの熱意が、その後の黒田の人生に大きく影響を与えることになるのです。


 1年後の07年オフ、ついにFA権を行使してメジャーへ。

 ロサンゼルス・ドジャースで先発ローテーション投手としての実績を積み上げ、世界中の野球ファンが憧れる名門ニューヨーク・ヤンキースへ移籍し、そこでも先発ローテーション投手として君臨。


 メジャーの契約金というのは日本球界のそれとは比較にならない巨額なもので、たとえば元楽天の“マーくん”こと田中将大は「7年契約で161億円」という高額契約をヤンキースと結びました。

 まぁ2/3は税金で持っていかれちゃうらしいんですが、それでも想像を絶する価格。しかも長期契約を結べば生活も保障されるし良いことづくめ。


 しかし、多くの選手が複数年契約を希望する中、なぜか黒田はいつも1年契約にこだわり続けた。それは、なぜか。


 実は、黒田がメジャーに移籍してから、カープも毎年「帰ってこい」とオファーを出していたんです。

 黒田がつけていた「背番号15番」を空けて“いつでも待っているぞ”と。

 だけど、カープにはお金がない。どんなに頑張っても提示できるのは4億円が精一杯。

 他球団のファンからは「バッカじゃねぇの?」「夢みすぎwww」と、毎年ずーーーっと馬鹿にされ続けてきました。


 ――ところが、です。


 14年12月27日の早朝、広島の地元新聞「中国新聞」の1面を飾った大きな文字は「黒田、カープ復帰へ」!!!!!

 

 その衝撃的な見出しはあっという間にTwitter等で全国に拡散され、真夜中の3時にトイレに立って何気なくケータイを覗いた私の眠気をも、一瞬でぶっ飛ばしたのです!


 ヤンキースやパドレス等から提示された20億を超えるオファーを蹴って、たった4億円(それでもカープにとっては最大限の額)のカープに戻ってくる。

 アメリカの税制では前年の収入に対して納税額が決まるから、4億円を選ぶということは、今年は収入がない、いやむしろ大赤字。

 しかもロサンゼルスの実家に家族を置いての単身赴任。

 しかも黒田の能力は衰えたわけでもなく、まだまだメジャーでバリバリやっていけるってのに…。


 その理由を黒田が語る。

「06年にファンの人たちに自分の心を動かしてもらったんで、そのファンの人を今度は自分が動かして、想いに応えたい」と…(ノД`)・゜・。


 ねっ?こんなん言われたら、もう惚れるしかないでしょ?


 そんな男気あふれる黒田さんは大阪出身。意外ですがオモロいことが大好き。

 渡米前のエピソードですが、チームメイトの新井貴浩のカバンの中にこっそり消火器を仕込む、というイタズラを仕掛けたことがあるそうです。

 しかも「天然」な新井さんはそのことに気づかぬまま「なんか重いなー」と言いながらそのまま持ち帰ってしまった、というオチまでついたそうな(´艸`*)

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