第52話
「お母ちゃん、なんでここへ?」
「多分、乗り遅れるじゃろうなぁと思って、農協の船を借りに来たんよ。でも父ちゃんに先を越されたねぇ」
「うん…ビックリした。あのお父ちゃんが、お兄ちゃんのために船を出してくれるなんて思わんかったもん」
私がそう言うと、母は軽く苦笑した。
「…昔の自分を思い出したんじゃろうねぇ」
「えっ?それ、どういうこと?」
「父ちゃんも若い頃、この島を飛び出して、都会に行っとった時期があるんよ」
私は驚いて、口をぽかんと開けた。
母は家への坂道を歩きながら話してくれた。
「…あの人が高校を出た春のことじゃった。こんな田舎は嫌じゃ、わしゃぁ都会へ行く…そう言い残して、家出してしもぅたんよ」
「うっそー!お父ちゃんが?」
驚く私の傍らで、母はクスクス笑った。
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