第13話

「ふん、お兄ちゃんが悪いんじゃもーん!」

舌を出す私に、兄はつかみかかろうとした。

「…やかましい!」

その時、父が低い声で怒鳴った。

「…あ、ゴメン…お父ちゃん」

私はすぐに父に謝った。兄もそそくさと姿勢を正した。

「道彦、飲めや」

父が兄の方にビール瓶を差し出した。

「いや、あの、僕は酒が飲めんから」

兄はあわてて父の勧めを断った。

「…相変わらず、つまらん奴じゃのぅ」

父は面白くなさそうに鼻を鳴らし、手酌で自分のコップにビールを注いだ。

「まだ、しょうもない雑誌を作りよるんか」

父が兄に絡んだ。少し酔っているようだった。兄は顔を歪めた。

「…親父にとってはつまらん雑誌かも知れんけど、僕らは一所懸命作ってるんだから」

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