第12話 Best shot with you!

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VRスクショ会 - Oshi♡Loveリリースイベント

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「みなさーん!今日は楽しんでいってくださいねー」


すばるの柔らかな声がVR空間に響く。それを合図に光る入場ゲートからアバター達が続々と浮かび上がってくる。

 

ファンがそれぞれのブースへと向かい、スクショセッションがスタートする。



ちいかのブース


「わぁ、ありがとう! 今日はどんなポーズにする?」


『元気いっぱいのピースで!』


「まっかせて!」


ちいかは、いつものように明るい笑顔を浮かべ、勢いよくピースを決める。モニター越しに映るファンの表情も弾けていた。


『ちぃちぃてぇてぇ!家宝にします!!』


「ははは、ありがと!じゃあ、またね!」


次のファンが入室するまでの短い間、ちいかはふっと小さく息をついた。ライブとはまた違う緊張感。それでも、ファンが喜んでくれるならそれでいい。


『ちいちゃん、2位だ!すげー』


──《1. 愛坂まりあ / 2.南華ちいか / 3.咲野なち/4.霧宮すばる》


「えっ? ほんと?」


ランキングをちらりと見たちいかは、「うーん?」と首をかしげる。


「まあ、いっか! 楽しいからいいや!」


『ちぃ様のそういうとこ好き!!』


「ふふ、ありがと!」


ちいからしい、天真爛漫で一点の曇りもない表情。その姿がファンを惹きつけ、列は順調に伸びていた。



もこのブース


『もこちゃん! 初めまして!』


「……来てくれてありがとうございます」


『えっと、猫耳ポーズお願いできますか?』


「このような形でしょうか?」


もこは手を耳のように折り、ポーズを取る。


『くっ!この可愛さを形容する言葉がない!!』


「……何ですかそれ」


もこも笑顔で答える。後ろ髪を引かれるように、しかし満足そうに退出していく。


『もこちゃん! “過保護患者【末期】”です!』


「あなたは……」


もこは少し考え込み、思い出したように頷いた。


「“俺の理想はここに具現化されていた……”とコメントされていましたね」


『うおお、認知してくれてる……!』


「いつもコメントを拝見しています」


『じゃあ、ツン顔お願いします!』


「ツン顔……?」


『ちょっとムスッとする感じで!』


「え?なんですかそれ?怒ってていいの?」


もこは、腕を組んで視線を逸らした。


『ああ、ナチュラルツン良すぎる……!』


過保護患者【末期】は、足取りが少しフラつくように感激しながら退出していった。


(……今のの何がいいんだろう?ファンサービスとして正しくないのに……)


彼女の中には、未だに整理しきれない感情があった。しかし、ファンの反応を見る限り、それは少なくとも「間違い」ではないのだろう。



あまねのブース


『あまね様、ご機嫌麗しゅうございます!今日もお美しいです!』


「ふふ、ありがとう」


扇子を広げ、優雅に微笑むあまね。その姿は、一つの芸術のように洗練されていた。


『その扇子で、扇ぐ仕草をしてください!』


「こうかしら?」


しなやかに扇を動かすと、ファンが大喜びする。


『ありがたき幸せ!永遠の忠誠を誓います!』


「ごきげんよう。またいらしてね」


流れるような所作で、ファンを見送るあまね。


「次の方はどなたかしら?……あら?副団長さん?」


次のファンが入ってくると、また優雅な微笑みが広がる。



他のブースに比べ、極めて静かで、静謐な森のような印象すら受ける一角。


『かなでちゃん、よろしくお願いします!』


「よろしく」


『お願い! かなでちゃんらしいポーズで!』


「……。」


少し考え、静かに手を組み、穏やかな微笑みを見せる。


『……。』


スクショが完了すると、ファンはほっとしたように息をつく。


『かなでちゃんありがと。頑張ってね』


小さく頷くかなで。彼女のファンとの交流は、他のメンバーとはまた違う。大きな盛り上がりはなくとも、確かな温もりがそこにはあった。


「またね」


言葉だけではない、確かな絆がそこにはあった。



みあのブース


『みあちゃん! ずっと応援してます!』


「ありがとう、会えて嬉しいよ」


『お姉さん風に微笑んでください!』


「ふふ、こんな感じかな?」


柔らかな笑みを浮かべるみあ。彼女の優しい雰囲気に、ファンの表情もほころぶ。


『最高すぎる……!』


「そう? それなら良かった」


スクショが終わると、ファンが名残惜しそうに退出する。


「こうして直接話せるの、いいね」


彼女はそう呟きながら、次のファンを迎えた。



リアルタイムのランキングは、少しずつ変動を見せていた。


──《1. 愛坂まりあ / 2. 琴上もこ / 3. 南華ちいか / 4. 桜庭みあ》


もこが2位に浮上し、ちいかが3位に後退する。ファンの動きが投票結果へと直結していく。


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イベントも中盤に差し掛かり、ランキングの変動は続いていた。


──《1. 愛坂まりあ / 2. 南華ちいか / 3. 白鷺あまね / 4.琴上もこ》


順位の推移は画面にリアルタイムで表示されているが、実際のところ、ファンと向き合っている間はそれを気にする余裕もない。

メンバーはそれぞれのブースで、次々とファンとの交流を重ねていた。



せいあのブース


せいあの前に、次のファンが入室する。


『せいあちゃん、よろしくお願いします!あ、会えて感激です!!』


「ありがとうございます」


せいあは落ち着いた口調で返す。その姿勢には、常に理路整然とした彼女らしさが滲んでいた。


『分析してる時の顔がすごく好きなんです!』


「分析顔……?」


せいあは一瞬、意外そうに目を瞬かせる。


『データチェックしてる時の、真剣な眼差しがたまりません!』


「なるほど、私の普段の姿を評価していただけるとは……」


彼女は僅かに首を傾げた後、静かに頷いた。


「では……」


タブレットを持つような仕草をし、少し眉を寄せる表情をすると、ファンの声が弾んだ。


『お、俺が、分析されてる……グハッ……!』


スクショのシャッター音が響き、画面の向こうでファンが満足げに頷くのが見えた。


「分析がアイドルの魅力になるとは……興味深いですね」


分析をしながら、せいあは次のファンを迎える準備を整えた。



なちのブース


「はーい、次の人どうぞー!」


なちの明るい声が響くと、次のファンが入室してきた。


『なちちゃん! いつも元気をもらってます!』


「わぁ、ありがとう! 今日はどんなポーズにする?」


『ジャンプしてピース!』


「オッケー! じゃ、一緒にいくよー!」


彼女は勢いよくジャンプし、両手でピースを決めた。その軽やかな動きに、ファンの声が弾む。


『ありがと!友達に自慢する!!』


「やったー! また来てね!」


ファンとのやり取りが続く中、なちはふとランキングに目を向けた。


「……おお、もこちゃん上がってる!」


『なちゅれは落ちちゃったけど……』


「んー、まぁ、順位は気にしても仕方ないしね〜」


『そうだね!あ、がおーのポーズお願いします!』


「オッケー!行くよー、せーの!がぉー!!」


なちとファンの朗らかなやり取りが続いていく。



凛のブース


「次の方、どうぞ!」


凛の前に、新たなファンが姿を現した。


『押忍!凛ちゃん! 今日は来れて嬉しい!』


「こっちこそ、ありがと!」


『ちょっとクールな感じでお願いします!』


「クール……こんな感じ?」


彼女は腕を組み、少し鋭い視線を送るようなポーズをとる。


「あ、押忍!さんだよね?いつも配信見てくれてる」


『!!!そうです!押忍!』


「いつもありがとね!スパチャ無理しないでね」


満足げに退出する姿を見送る。しかし、その頃になると、凛の対応するファンの数が減り始めていた。


「あ、もうすぐ終わりかー」


ランキングの表示が変動し、スクショ会の対応時間が短くなっていく。


「……ま、しゃーないな!」


凛は軽く肩をすくめながらも、わずかに寂しそうな笑みを浮かべていた。


──《1. 愛坂まりあ / 2. 南華ちいか / 3.琴上もこ / 4.咲野なち》

 


すばるのブース


「いい子、いい子このポーズ?」


すばるは少し困惑気味に答えながらも、頭を撫でる仕草をする。


『ふぁぁあ、しあわせぇ』


「ふふふ、ありがとう。またね」


「なんだか、甘えん坊が多いわね……」


くすりと笑いながら列を見つめる。

彼女もまた、ファンの列が徐々に減りつつあった。


『すばるん!叱ってください!!』


「え、えぇ?どうして?」


最後のファンを「こら♡」と叱り、彼女のスクショ会は幕を閉じた。



『イリス様!馳せ参じました!!』


「うむ、ご苦労!何なりと申すがいい!」


『はっ!では、跪かせていただければ光栄です!』


「我にひれ伏せぃ!!」


『はっ!仰せのままに!!』

 


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VRステージ - Oshi♡Loveリリースイベント 結果発表

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スクショ会が終わると、メンバーたちはステージへと移動していた。


広がるのは、イベント専用のVRステージ。

円形のプラットフォームの中央には大きなスクリーンが設置され、その上部に投票結果がリアルタイムで映し出されていた。

ステージの周囲にはファンのアバターが並び、まるで本当のライブ会場のような雰囲気が広がっている。


「みんな、お疲れさま!」

七尾凛がマイクを持って声を響かせると、ファンのコメントが一斉に流れた。


──『お疲れ様でした!』

──『めっちゃ楽しかった!』

──『スクショ宝物にする!』


メンバーたちはそれぞれ笑顔を浮かべながら、ステージ上に並ぶ。


「さて、ここで今回のスクショ会の最終結果を見てみようと思います!」

霧宮すばるがタブレットを操作し、スクリーンに投票結果を映し出す。


──《1. 愛坂まりあ / 2. 南華ちいか / 3. 琴上もこ / 4. 楡木せいあ》


ステージに大きく映し出された順位を見て、ファンのコメントが一気に流れた。


『まりあ1位おめでとう!』

『もこちゃん3位!? すごい!!』

『ちぃちぃ2位だ!嬉しい!』

『せいあちゃん4位、さすが!!』


まりあは順位が発表されても、特に驚く様子もなく、いつも通りの穏やかな表情を浮かべていた。


「皆さん、本当にありがとうございます」

彼女はゆっくりとファンの方を向き、優しく微笑む。


「私たちがここにいられるのは、皆さんが応援してくれているからです」


その言葉に、さらにファンのコメントが増えていく。


『この感じ、まりあちゃんらしいなぁ……』

『落ち着きがセンターの貫禄』


「まりあ、落ち着きすぎじゃない?もっと喜びなよ」

なちが冗談めかして肩をすくめる。


「え? そうかな?」

まりあは首を傾げるが、その表情は変わらない。


「まあ、これがまりあか」

凛が笑いながら腕を組む。「でも、もこの3位ってすごいね、頑張ったな」


もこはスクリーンの数字をじっと見つめていた。


「……私は、特別なことをしたわけではありませんが……」


彼女の声はいつもより少し小さく、慎重に言葉を選んでいるようだった。


『もこちゃん、すごいよ!』

『ツンデレ進化の成果か!?』

『守りたい!その95%のツン!』


「そうかな……」


ファンの声援を見ながら、もこは少し考え込む。


「もこ、もっと胸張っていいんだよ」

なちが笑いながら声をかける。「3位って、すごいよ」


「……ありがとうございます」


もこは小さく頷いたが、まだ完全には実感が湧かない様子だった。


その横で、2位にランクインしたちいかに、ファンからの祝福が相次いでいた。


『ちぃ様!2位おめでとう!!』

『ちぃちぃてぇてぇ』

『これは拝んでおくしかない』


「いやー、みんなありがとねー!」

ちいかは軽く手を振りながら、満面の笑みを見せる。「スクショ会、めっちゃ楽しかったよー!」


「せいあちゃんが4位だね!」

すばるが続ける。


せいあは、スクリーンに映る自分の名前を静かに見つめていた。


「……興味深い結果です」


『せいあちゃんもおめでとう!!』

『分析枠が強い!』

『流石冷静。分析眼で見通してたのか?』


「分析枠……?」


せいあは僅かに眉をひそめながらも、ファンの声を受け止めていた。


「確かに、スクショ会の際に、『分析している時の顔が好き』というコメントがありました」


「せいあちゃんのデータ分析する姿、めちゃくちゃかっこいいもんね!」

ちいかが笑いながら頷く。


「まさか、アイドル活動においてデータ分析がファンの皆様の支持につながるとは……新たな示唆が得られました」


「ま、なんにせよ、楽しかったならそれでいいじゃん!」

凛が軽く肩をすくめる。


「それじゃあ、みんな! 改めて今日は本当にありがとう!」

すばるが締めくくる。


『お疲れ様でした!』

『めっちゃ楽しかった!』

『最高の時間をありがとう!!』


ファンのコメントが次々と流れる中、まりあが最後に優しく微笑んだ。


「これからも、私たちと一緒にいてくれたら嬉しいな」


その言葉が画面に響いた瞬間、ファンの歓声がさらに大きくなった。


『もちろん!!』

『これからも推し続ける!!』


メンバーたちは、それぞれの気持ちを胸に、スクショ会を終えた。


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【むすチャン!】NetMusume Channel

 インターネット娘公式チャンネル

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『特別企画!スクショ会振り返り配信』

 


スクショ会の全日程が終了し、公式からの発表が行われた。


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「Oshi♡Loveリリース記念 スクショ会 & デジタルサイン会」 結果発表


スクショ撮影数ランキング

1位:愛坂まりあ、2位:南華ちいか

3位:楡木せいあ、4位:琴上もこ


総合順位

1位:愛坂まりあ、2位:南華ちいか

3位:琴上もこ、4位:楡木せいあ

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発表された結果はSNS上でも瞬く間に広がり、多くのファンが自分の撮影したスクショを投稿しながら、推しメンバーの活躍を称えていた。


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配信が始まり、画面上にはまりあ、ちいか、せいあ、もこがVR空間で座っていた。普段とは違い、トップ4が並んでそこにいる、ライブと同じ形式での配信。

宙に浮くホログラムに、視聴者からのコメントが流れ続けている。


『お!VR配信!』『やべやべ、機材出さなきゃ!』『ネトむす四天王、尊い!』


「みんな、今日は来てくれてありがとう!」

ちいかが元気よく手を振る。「スクショ会、楽しかったね!」


「うん、楽しかった」まりあがゆったりと微笑む。「みんなが嬉しそうだったのが、こっちまで伝わってきたよ」


『まりあの笑顔は癒し…』『まりあってほんとに天使なんじゃないか…?』


「……天使?」まりあが笑いながら首をかしげると、画面には『そこがいい!』と即座にコメントが流れる。


「今日は、せいあちゃんがファンの名前をデータ分析してたって聞いたけど?」

ちいかが隣を振り向く。


「ええ、スクショ会の間もデータ収集してました」

せいあがコンソール見ながら「例えば、『このポーズが人気だった』とか、『最もリクエストされた表情』とかですね」


『ガチ分析!』『さすがせいあちゃんw』『仕事が早い!』


「なるほど。つまり、次回のスクショ会で、最適なポーズを提供できるようにすると?」

もこが腕を組んで分析的に問いかける。


「ええ、ファンサの最適化ですね」

せいあがさらりと言う。


『せいあ様、さすがインターネット娘の知能』『相変わらずのネタバレスタイルw』

『もこたんによる、アルゴリズム解析ww』『相手がいなくてもツンw』


「待ってください。普通のコメントですよ?」

もこが冷静に反論すると、

 

『もこはツンデレAI』『でもそれがいい』『ツンデレ最適化待ってます!』

矢継ぎ早にコメントが続く。


「……もう、普通にしてるだけですー!」


「ほら、もこ怒んないの」ちいかが笑う。

「そんなのだから、もこのスクショはツンデレポーズばっかりになるんだよ」


「怒ってないんですが……みなさんノリでそう言ってません?」

もこが本気で疑問を持った様子で首を傾げる。


『もこはツンデレの権化だから!』『ツンデレを極めるしかない!』『次回も期待してますw』


「なるほど……需要と供給の関係ですね」


「そういうことじゃないと思うんだけどな~」

ちいかが苦笑しながら肩をすくめる。


「でも、スクショ会で色々なポーズを見て、次回は別のメンバーとも撮りたい!って思った人も多いみたいだね」

せいあがスクリーンを指さしながら続ける。「SNS上でも『次は違うメンバーと撮りたい!』って投稿が増えてるよ」


『ちいかのあのポーズが良かった!』『せいあちゃん、ぷくーはしてくれなかった』『まりあエモすぎる…』


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「そういえば、公式の会場撮影画像とか見た?」

ちいかが視聴者に問いかける。


『見た見たー!』『オフショットっぽくて凄く良かった…』


「公式のSNSアカウントに上がってるヤツですね」

せいあがコメントを拾いながら言う。「まりあちゃんのスクショ、特にエモいって言われてますよ」


「エモいかぁ……」まりあがきょとんとする。

 「みんなと記念撮影してるみたいで楽しかっただけなんだけどね……」


『それがいいんだよ!』『まりあは“らしさ”が自然と出るんだよね』


「まりあは気にせずやるのが、一番まりあらしいかもね」

ちいかが頷く。「でも、せっかくだし、他のメンバーのスクショを見て、次回の参考にするのもいいかも?」


『確かに!』『メンバーのお気に入り見たい!』


配信画面には、無数のコメントが流れ続けていた。


「じゃあ、どれから見ていこうか?」ちいかが軽やかに問いかける。彼女の声には、イベントの余韻がまだ色濃く残っている。


『やっぱりイリス様のポーズが見たい!』『かなでちゃんの表情、もっと見たい!』『あまね様の優雅な瞬間を!』


「ふむ、では選ばれし一枚を見せるがよい!」ワイプ画面でイリスが胸を張る。その直後、せいあが画面を操作し、一枚のスクショが映し出された。


背景には鮮やかなライティング。イリスは冥界の支配者を思わせる堂々たるポーズを決めていた。


『かっこよすぎる!』『これぞ冥王』『推しの忠誠度が試される』


「ふふん、見よ、この威厳!」イリスが満足げに頷く。「我が軍勢も誇らしく思うであろう」


「いや、ほんとにハマってたよね」まりあが柔らかく笑う。「イリスらしさがすごく好き」


視聴者のコメント欄は、イリスのポーズを絶賛する声で埋め尽くされていた。


「さて、次は……」せいあがスクロールし、新たなスクショを映し出す。


画面に映ったのは、かなでの静かな微笑み。光の加減が絶妙で、まるで映画のワンシーンのような儚さが漂っていた。


『かなでちゃんのエモさ、最高…』『静けさの美学…』『心に刺さる一枚』


「……」画面の中のかなでは少し視線を落とした。自分が撮られることには慣れているはずなのに、こうしてスクショを改めて見ると、どこか照れくさい。


「かなでちゃんはさ、狙わずにこういうのが撮れちゃうんだよね」ちいかが感心したように言う。「ファンの人も、こういう瞬間が好きなんだろうな」


『まさに唯一無二』『無言の語りかけがすごい』『かなでの魅力は言葉じゃ表せない』


かなでは小さく頷いた。彼女の静かな雰囲気は、ファンにとって特別な存在感を持っているのかもしれない。


「じゃあ、次は……」せいあがさらにスクショを切り替えた。


画面には、扇子を広げたあまねの姿が映っていた。動きの流れの中で切り取られた一瞬は、まるで舞のように優雅だった。


『あまね様、華麗すぎる…』『流れるような扇子さばき…』『ため息が出る美しさ』


「なるほど、こういうふうに見えていたのね」あまねがスクショを眺めながら呟く。「もう少し角度を工夫すれば、次はもっと美しく撮れるかもしれませんね」


『次回も期待!』『洗練された美しさ、さらに磨かれる…』『あまね様の舞をもっと見たい!』


「こうやって見ると、ファンのみんながどんなところを見てくれてるのか分かるね」ちいかが感慨深げに言う。「スクショって、意外と奥が深いなあ」


「さて、そろそろ私たちのスクショも見てみようか」ちいかがスクリーンを見渡しながら、次の展開へと繋げた。


せいあが画面を操作し、次のスクショが映し出される。


「お、これは……もこちゃん?」


画面には、少し戸惑ったような表情のもこが映っていた。ステージの光が彼女を照らし、わずかに口を開きかけている。


『このもこ、めっちゃレアじゃない!?』『ちょっとだけデレてる!?』『もこの表情、貴重すぎる』


「……うう、何か恥ずかしいです」もこがじっとスクショを見つめながら、照れながら呟く。


「でも、これ……何か考えてる感じに見えるね」ちいかが画面を覗き込む。「これ、どのタイミングだったんだろ?」


『あ、多分私の前でしたね!』『患者さんの時!』『見てた、見てた!』


「おお、すごい」せいあが感心したように画面を見やる。「みんな、ちゃんと見てるんですね」


「ファンの皆様の観察眼、恐るべしです……」もこが静かに呟く。


『ところで、デレを増やすご予定は!?』『もこ、デレモード搭載しませんか?』


「……考えておきます」


「さて、次は……」ちいかがスクリーンを見ながら呟く。「まりあちゃんのスクショ、いってみようか」


画面には、まりあがファンと向かい合いながら柔らかく笑う姿が映し出された。


『マジ天使…』『この視線、完全にこちらを見ている』『推しのエンジェルっぷり、最高』


「……私、こういうふうに見えてるんだ」まりあは、ふーんという風に自分の姿を眺める。


『そこがいいんだよ!』『まりあはそのままで完璧』『自然体で推し活を導く天性の才能』


「まりあは、いつも通りやってるだけなんだろうけどね」ちいかが笑いながら言う。


「しかし、スクショって、こうして見るとすごく面白いですね」せいあがタブレットを閉じながら言う。「その瞬間の表情や動きが、ファンの皆さんにとって特別な意味を持つんだから」


「そうだね」ちいかが頷く。「次のスクショ会では、また違った一面を見せられるかも?」


『次回も絶対行く!』『もっと色んな表情見せて!』『推しの魅力を引き出すスクショ職人、待機』


「「「それじゃあ皆さん!次はライブで会いましょう!」」」


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『VR Live Systemを終了します』


 

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