【2人台本】⠀夢幻泡影
夜染 空
夢幻泡影
登場人物
トシキ:小学生 一人称僕となっておりますが性別不問です
綾乃:一人暮らしをする大学生…のはず 女性
0:以下本編
トシキ:「M/あの頃の僕は、きっと夢を見ていたんだ…。」
0:図書館で本を探すトシキ
トシキ:「おっかしいなぁ…昨日はあったのに…誰かが借りて行ったのかな…」
トシキ:「……んー、ない…」
トシキ:「仕方ない、帰ろぶっっ(誰かにぶつかる)」
綾乃:「おっと、ごめんね?大丈夫?」
トシキ:「大丈夫……って、その本!」
綾乃:「本?これがどうかした?」
トシキ:「僕が借りようと思って探してたんだ!」
綾乃:「そうなの?じゃあ、はい。」
トシキ:「……借りるんじゃないのか?」
綾乃:「懐かしくて読んでただけだよ、取っちゃってごめんね?」
トシキ:「…」
綾乃:「じゃあね」
トシキ:「あ……うん…」
0:翌日、夕方の図書館にてコソコソするトシキ
トシキ:「M/本を返しに来ただけ…昨日の人がいるかどうか気になってる訳じゃないし!本を返しに来ただけだし!」
0:後ろから声をかける綾乃
綾乃:「あれぇ?昨日の子だぁ!」
トシキ:「うわっ!!」
綾乃:「また会ったね!」
トシキ:「…ど、うも…」
綾乃:「お?それ昨日の本?もう返しに来たの!?君本読むの早いんだね」
トシキ:「家だとやることないから…それに、親の帰りも遅いし…」
綾乃:「ふぅん?」
トシキ:「ここなら好きなだけ本読んで暇つぶしできるし、途中になったら借りればいいし」
綾乃:「でも、そろそろ閉館の時間だよ?いくら遅いって言っても、さすがに家にいないと」
トシキ:「どうせ今日も夜遅いよ…」
綾乃:「……」
トシキ:「でも、そのおかげで誰にも邪魔されずに本が読めるんだ!」
綾乃:「寂しくない?」
トシキ:「…」
綾乃:「ん?」
トシキ:「…寂しいけど、本読めるから、平気」
綾乃:「そっか」
トシキ:「うん…」
綾乃:「…君、名前は?」
トシキ:「小野屋 トシキ…小学生」
綾乃:「トシキ君ね。私は綾乃!夕方は大体いるから、寂しくなったらいつでもおいで!」
トシキ:「う、うん」
綾乃:「暗くなる前に帰るんだよー?またね!」
トシキ:「M/またね…だって。また、会いに来て良いのかな……」
0:2日目
綾乃:「トシキ君は勉強もちゃんとやって偉いね!」
トシキ:「これくらい出来て当然だろ!」
綾乃:「んー!偉い偉い!」
トシキ:「頭撫でんな!揺らすなぁ!」
綾乃:「あははっ!君は可愛いねぇ!」
トシキ:「やーめーろぉー!」
綾乃:「でもさぁ、毎日毎日図書館にいるけど、友達は?」
トシキ:「…同級生が、ガキに見えるから、遊ばない」
綾乃:「小学生が何言ってんの!子供は遊んでなんぼでしょうが!」
トシキ:「楽しくない。みんなゲームばっかりだし…僕、同じの持ってないから、遊べないし…」
綾乃:「外で遊べばいいじゃん」
トシキ:「外にいるのにゲーム持って来るんだ!」
綾乃:「おぉ…」
トシキ:「学校では休み時間にサッカーやったりするけど…」
綾乃:「そこでもゲームの話になってついていけない?」
トシキ:「(小さく頷く)」
綾乃:「だからってここにいても、やることは本読むか勉強でしょ?」
トシキ:「…今は、綾乃ねーちゃんが居るから、あんまり気にしてない」
綾乃:「気にする?何を?」
トシキ:「(ムキになって)……なんでもない!」
綾乃:「もー、そんなに怒らないでよぉ」
トシキ:「怒ってない!」
綾乃:「ふふっ、君はやっぱり子供だねぇ」
トシキ:「…子供で、悪かったな」
綾乃:「悪くは無いよ?ただねぇ…私がトシキ君ぐらいの時は、遅くまで外で遊んで怒られるなんてしょっちゅうだったからさ、今の子は遊び方が違うんだなって思ってね」
トシキ:「…」
綾乃:「ゲーム持ってる子の方が少なかったから、時代だなぁって。」
トシキ:「ゲームないけど、こーやってるほうが楽しい…」
綾乃:「……」
トシキ:「……」
綾乃:「…トシキ君、今日もお父さんとお母さん、帰るの遅いの?」
トシキ:「うん」
綾乃:「…なら、私の家でご飯食べていきなよ」
トシキ:「え、それは…」
綾乃:「一人暮らしだから誰かいるとか気にしなくていいし、私の家にも本あるから好きなの借りて行ってもいいし…どうする?」
トシキ:「…行く」
綾乃:「じゃあ決まり。行こ!」
0:綾乃宅
綾乃:「嫌いなものある?」
トシキ:「…ない」
綾乃:「ん!じゃあ、とりあえずカレーだな!」
トシキ:「……ぅん」
トシキ:「M/連れてこられた綾乃ねーちゃんの家はアパートで、ビックリするぐらい何も無くて、寝るだけの布団と勉強する机、棚にぎっしり並べられた本……それ以外は何も無かった…」
綾乃:「人の部屋ジロジロ見るもんじゃないぞぉ」
トシキ:「あ、ごめん……」
綾乃:「ふふっ、まぁいいよ。何も無くてビックリしたでしょ?」
トシキ:「…うん」
綾乃:「私片付けが苦手でさぁ、定期的にまとめて色んなもの捨てないと足の踏み場が無くなるぐらい物を溜め込んじゃうんだよね…」
トシキ:「…片付けたあとの部屋って事?」
綾乃:「そーゆー事!じゃなきゃ人なんて呼べないよ!」
トシキ:「僕の方が片付け上手だ…」
綾乃:「お?言うねぇ…!じゃあ、今度は部屋の掃除要因として来てもらおうかな!」
トシキ:「…自分で片付けなよ」
綾乃:「明日にはきっとゴミ屋敷だよ?」
トシキ:「…それはヤバい」
綾乃:「でしょ?」
トシキ:「……へへっ!」
綾乃:「あははっ!さっ!座って待ってて!」
トシキ:「M/待っている間、僕は本棚から一冊の本を選んで読んでいた。その本は、幽霊と生活する大学生のお話で、難しい漢字が沢山あったけど面白くて夢中になって読んでいた。そうしているうちにカレーが出来て、一緒にいただきますをして…たくさん笑って…誰かとご飯を食べる事が楽しくて…家に帰る時間が、来なければいいのに。なんて大人みたいなことを思ってしまった」
綾乃:「遅くなっちゃってごめんね…!送るよ!」
トシキ:「へーき、1人で帰れるよ」
綾乃:「ダメダメ!こんな時間に小学生を1人で帰らせるなんて!責任もって送り届けるよ!」
トシキ:「…大丈夫だってば」
綾乃:「だーめ。」
トシキ:「…わかった」
0:帰り道
綾乃:「さっき読んでた本、良かったらあげるよ」
トシキ:「え、いいの?」
綾乃:「うん、もう何回も読んで内容は全部覚えてるからね」
トシキ:「大切な本じゃないの?」
綾乃:「いいのいいの!あんなに夢中になって読んでくれるなんて思わなかったから嬉しくてさ!」
トシキ:「…なら、貰う!」
綾乃:「ん!明日図書館に持っていくから、その時に渡すね!」
トシキ:「…うん!」
トシキ:「…あ、家ここ。」
綾乃:「喋ってるとあっという間だね、またおいで!部屋、ちゃんと片付けておくからさ」
トシキ:「うん!カレー、美味しかった!またね!」
綾乃:「またね!」
0:3日目、図書館にて
綾乃:「トシキ君、はいコレ、約束の本」
トシキ:「ありがとう!」
綾乃:「ふふっ、素直にありがとう言えて偉いねぇ!」
トシキ:「あぁぁ、急に頭撫でないでよぉ!」
綾乃:「可愛いんだもん!」
トシキ:「可愛いって言うなぁ!!」
綾乃:「…今日は?本読んで帰る?」
トシキ:「あ、今日は親が早く帰ってくるみたいだから…」
綾乃:「そっか、じゃあまた明日だね!」
トシキ:「…うん、」
綾乃:「ん??寂しいの?」
トシキ:「べ、別に!寂しくなんかないよ!」
綾乃:「ふふっ」
トシキ:「…また明日来るね」
綾乃:「うん、また明日!」
0:4日目
トシキ:「……本のお礼に何かあげたいんだけど…」
綾乃:「お??どうした?」
トシキ:「いつも相手してくれるし、本も貰ったし…なにかお返ししたい」
綾乃:「いらないよ、やりたくてやってる事だから気にしないで」
トシキ:「それだと不公平だ」
綾乃:「難しい言葉知ってるねぇ、さすが文学小学生」
トシキ:「からかうなよ!」
綾乃:「って言われても、お礼かぁ…物が増えるのは困るし、かと言ってなぁ…」
トシキ:「…部屋の掃除は?」
綾乃:「…ん?」
トシキ:「部屋の掃除…苦手って言ってたじゃん、」
綾乃:「あー。それはねぇ、今は大丈夫」
トシキ:「なんで?」
綾乃:「大丈夫」
トシキ:「……」
綾乃:「トシキ君、大人に気を使うもんじゃないよ?」
トシキ:「なにかしたかったんだ…」
綾乃:「うん、気持ちは嬉しい。でもね、私は、お返しが欲しくて本をあげたわけじゃないよ。」
トシキ:「……」
綾乃:「一緒にいて楽しいから、私がトシキ君と遊びたいから一緒にいたんだよ。」
トシキ:「…僕と、遊ぶ…?」
綾乃:「そう。」
トシキ:「遊んで、くれてたの?」
綾乃:「そうだよ?嫌だった?」
トシキ:「…嫌じゃない」
綾乃:「誰かと時間を共有する事はとても大切な時間だよ。それがどんな形であれ…ね」
トシキ:「うん…」
綾乃:「それに、弟がいたらこんな感じかなぁって!だから余計に楽しかったよ?」
トシキ:「…ぼくも、おねーちゃんいたらって、ずっと思ってた」
綾乃:「本当のおねーちゃんにはなれないけど、こうして一緒にいる時はいっぱい楽しんで欲しいな!」
トシキ:「…うん!」
トシキ:「M/それから僕は綾乃おねーちゃんとできる限りの時間を過ごした。学校をサボろうとして怒られて、学校が終わったら図書館に行って、難しい漢字を教えてもらったり、宿題を見てもらったり…楽しくて、時間はあっという間に過ぎていった」
0:1週間後
トシキ:「おねーちゃん!ここの漢字って……」
綾乃:「(アナウンサーの声)続いてのニュースです、現在行方不明となっている吉原綾乃さんが遺体として発見されました。現場は自宅アパートから離れた山間部で登山客によって人の骨のようなものがあると通報が……」
トシキ:「…よしはら、あやの……?」
綾乃:「…あららぁ、バレちゃった」
トシキ:「おねーちゃん…?」
綾乃:「私…本当は死んでるんだ」
トシキ:「…うそだ」
綾乃:「嘘じゃないよ。誰かに後ろから襲われて、気が付いたら自分の体が目の前にあって…」
トシキ:「だって、ちゃんと見えてる、触れるよ?」
綾乃:「ね?不思議だよね?今までこんなこと無かったのにさ」
トシキ:「おねーちゃんは、ここにいるよ?」
綾乃:「うん、でも、もう居ないの。」
トシキ:「……うそだ…」
綾乃:「トシキ君、楽しい時間をありがとうね」
トシキ:「お化けでもいいよ!」
綾乃:「……トシキ君」
トシキ:「僕はおねーちゃんと本読んだりするのが楽しかった!これからもそうやって一緒にいたい!」
綾乃:「出来ないよ、私は幽霊だから…体も見つかったし、いつまでもこっちに居られない」
トシキ:「やだ…!」
綾乃:「トシキ君……あの本、最後まで読んだ?」
トシキ:「…本…貰ったやつ?」
綾乃:「そう、あの本の最後、わかる?」
トシキ:「…うん」
綾乃:「実を言うとあの本の作者は私なんだ。」
トシキ:「え、?」
綾乃:「自分がもし幽霊だったら……逆だったら…そんなことを思いながら書いて、出版社に持っていったらたまたま賞をとって書籍化されて…まさか自分がその立場になるとは思わなかったけどね」
トシキ:「…」
綾乃:「だからね、あの本の通りの終わり方をさせて欲しいな」
トシキ:「…最後は」
綾乃:「そう、最後は幽霊が笑ってさよならするの。」
トシキ:「……」
綾乃:「ね?」
トシキ:「…いつかまた、会えるかな…」
綾乃:「会えるよ、きっと!」
トシキ:「……じゃあ、待ってるね…また会えるの。」
綾乃:「うん!騙すみたいなことしちゃってごめんね?でも楽しかったよ!本当に!」
トシキ:「僕も、楽しかった…いっぱい遊んでくれて、ありがとう…!」
綾乃:「バイバイ、トシキ君!」
0:ゆっくりと見えなくなる綾乃
トシキ:「おねーちゃん!」
トシキ:「…おねーちゃん……」
トシキ:「M/後でおねーちゃんのアパートに行ってみたけど、警察やテレビ局の人が沢山いて部屋に入れそうにはなかった…」
トシキ:「M/僕とおねーちゃんが過した日々は偽物なんかじゃない…」
トシキ:「M/ちゃんと覚えてる…寂しいけど、おねーちゃんがいてくれたから、僕はひとりじゃなかった」
トシキ:「おねーちゃん、ありがとう…」
0:数年後
トシキ:「今日で高校生活も終わりかぁ……就職先も決まったし、一人暮らしする場所も見つかった…後は……癒しだな…ペット可のアパートだから何か飼いたいんだけど…」
綾乃:「(猫)にゃーん」
トシキ:「…お?子猫だ、ちっこいなぁ…野良かな?」
綾乃:「にゃーん!」
トシキ:「おわっ!飛びついてくるなよ、ビックリするだろ?」
綾乃:「にゃー!」
トシキ:「あはっ、懐っこいやつ!」
綾乃:「トシキ君……」
トシキ:「………お前、今喋った?」
綾乃:「にゃ?」
トシキ:「…まさかな……お前、行くとこないなら俺と一緒に暮らすか?」
綾乃:「にゃー!」
トシキ:「よし、ならお前の名前は……!」
綾乃:「M/トシキ君、ありがとう。」
end
【2人台本】⠀夢幻泡影 夜染 空 @_Yazome_
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