第13話 履修案内

「色々と迷うところだと思いますが、その時は学生窓口に起こしください。学生証の配布と併せて、どの授業がおすすめかご案内いたします」



 ――――

 と、言われるままに学生窓口に来た。ただ、どこに行けばいいのか分からず、入り口の辺りで右往左往うおうさおうしていると、窓口の奥から女性が出てくる。


「おや、学生さんですね、履修りしゅう案内ですか?」


「はい、ヘルタさんが迷ったらここだと」


「そうですか。ではこちらの用紙に記入を。いっぱい書いてくれればそれだけ案内しやすくなりますので」


 そう言われて渡された用紙には、名前、学年、流派の他に、学院でやりたいこと、卒業までの目標などを書き込んだ。


「さて、今回レオンさんの案内をさせていただきます、マティルデと申します、よろしくお願いします。レオンさんは、シノザキ流の一年生で、目標は至天ウルドですか。学院では『魔力に関しての知識を基礎から沢山学びたい』と。」


 そういうとマティルデさんは奥から書類を引っ張ってきた。


「まず学ぶ上で、各講座に基礎、基本、応用とついていますが、基礎は初歩的な分野を学びます。これに続く基本では基礎の上に成り立つ一般知識についてを学ぶことができ、この知識の発展により応用の分野が成り立っています。レオンさんは初歩から魔力を知りたいとのことなので、この基礎魔法理論、基礎刻印術、基礎錬金術のあたりから勉強するのが良いと思います」


「これ、同学年の中で俺だけ置いていかれるなんてことありますかね」


「それについては、気にしなくて大丈夫です。ヘルタさんが言ってたと思いますが、年度末の進級試験に合格すれば進級はできます。『それなら授業受けなくていいのでは?』と思うかもしれませんが……」


 ヘルタさんの話だと、



一、進級試験の参加条件はない。

二、ほとんどの講座において修了試験がある。

三、この修了試験においても、参加条件は無い。

四、一部の講座においては、特定の講座の修了証明がないと参加できない。



 ……とのことだ。


「……つまり、現状の実力を見て授業に参加して、受けたい授業があれば、その授業の修了をすれば問題ないというわけです。手元の資料ですと、レオンさんは編入時の修了が皆無ですので、受けたい授業があって履修りしゅう条件がある講座は軒並のきなみその条件を満たさなければならないので、最初は大変だと思いますが、自分の実力を伸ばすためだと思って頑張りましょう!」



 ――――

 マティルデさんと相談しながら、受けられる授業を上手く調整してもらいながら履修りしゅう登録してもらった。


「……という訳で履修りしゅう登録は以上になりますね。お疲れ様でしたー。こちらがレオンさんのしばらくの講座予定になります。そして、こちらが学生証になります。こちらを持っていれば、学生食堂が無料になります。部外の人にも開かれているんですが、学生さんは無料ですので、是非利用してくださいね」


「ありがとうございます!」


「では、明日からの授業、頑張ってくださいね」

 


 ――――

 今日の昼飯は、売店の弁当にした。がっつりサンドイッチセット。


 軽食として売られているものにしては、このずっしり感。


 そんなサンドイッチセットの包みを持って、でけぇ院内をふらつく。


 明日から、本格的に学生生活が始まるのか。想像つかねーな……。


 お、ここら辺にするか。




 道を外れて林の手前の草っ原に腰掛け、ふぅと息をつく。


 柔らかくも涼しい風が春の陽気で少し汗ばんだ身体に心地いい。


 たまにはこんな感じに外で飯を食べんのも楽しいもんだろ。


 そう思いながら、サンドイッチセットの包みを開ける。


 買ったときのあのズッシリ感。気になってたんだよなー。


 包みを開けると、3種類のサンドイッチが入っていた。


 流石さすががっつりサンドというだけあるぜ。


 カツサンド、エビ玉子サラダサンド、チーズベーコンサンド。


 カツサンドの分厚さもいいが、それに劣らないベーコンの分厚さ。納得のズッシリ感だな。


 さて、いっただきま――

 


 ヒュオッ!

 


 ――なんだぁ?



 ザザッ、ヒュオッ!



 林の奥から、軽快に足を運ぶ音と空を切る音が聞こえる。


 出どころを探して林の中に入ると、そこに居たのは、アルス・カーフェンだった。


「……おっと、すまない。あんなところで昼食をとるとは思わなかったんだ。同級生みたいだけど、名前を聞いていいかな」


 ……あれか、まずかったか。気位の高い人にとっちゃあ、あんなところで飯を食うって発想にならねぇもんな。


「……レオン。レオン・ノイアーだ」


「レオン・ノイアー……。ノイアー……、ノイアー……」


 と、アルスはどこかで聞いた風な顔をしていたが、思い当たらなかったのか、すっと俺の方を向いて、


「よろしく。レオン・ノイアー君。僕の名前は……」


「知ってるよ。時の人だぜ、アルス・カーフェン君。こっちこそわるかったな、貴重な時間を邪魔じゃましてしまって」


「にしても、あの位置から……」


 というと、何か思いついたのか、持っていた木剣を俺の方に差し向けて、



「いや、問題ない。……そうだ。会ってすぐの関係で厚かましいとは思うが、僕の訓練に付き合ってくれないか。」

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