輪廻の光鱗 ~最低騎士団長は氷の秘書官を離さない~
鳥尾巻
プロローグ ~>゜)~~~
金色の陽が差し込む朝靄の中を走る。慌てて雑にまとめたブルネットの髪がほどけ、折しも吹いた海からの風に乱されていく。
なんてこと、なんてこと、なんてことだ! 23年間生きてきて、こんな失態は初めてだ。
私、クララ・ベッカーは田舎から王都に出てきたばかり。品行方正、曲がったことは大嫌い。とある秘密を抱え、藪をつつかれぬよう極力感情を抑え真面目一辺倒でやってきた。学生時代から可愛くないとか氷の女なんて言われていたけど、実害がなければ聞こえぬふりでやり過ごした。
そんな私が気づいたら恋人でもない全裸の男とベッドで寝ていたなんて、故郷の両親にはとても言えない。ごめんなさい、お父さん、お母さん。クララはふしだらな娘になってしまいました。
『運命を信じる?』
あの人がそう言った時、私の心は歓喜に満ちた。あなたも私を探してくれていたのね。でもすべてが偽りだと気付いた時、私の心は粉々に砕け散り、もう二度と戻ることなどないように思えた。
もう誰も信じない。私は溢れそうになる涙をこらえながら、露に濡れた石畳の道をひたすら走り続けた。
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