第3話 罠 - 疑念と恐怖

「これより、天売島サバイバルゲームを開始する」

アナウンスが島中に響き渡り、15人の参加者はそれぞれの場所から動き出した。鬱蒼とした原生林、切り立った断崖、荒々しい海岸線。天売島は、美しい自然と同時に、過酷な環境を参加者たちに突きつけた。

「さて、どこから手をつけようか」

 赤坂は、背負ったリュックからコンパスを取り出し、島の地形を確認した。彼の目は、獲物を狙う獣のように鋭く光っていた。

「まずは、食料と水の確保だな」

 島野は、周囲を見渡しながら呟いた。彼は、都会で培った交渉術を武器に、他の参加者との連携を模索していた。

「この島、何か嫌な予感がするわ」

 影沼は、風の音に耳を澄ませながら呟いた。彼女は、冷静沈着な性格で、島の地形と参加者の動向を分析していた。

「まさか、こんなに早く始まるなんて…」

 豊島は、緊張した面持ちで周囲を見回した。彼女は、運動能力には自信があったが、サバイバル経験は皆無だった。

「…生き残るしかない」

 五十嵐は、拳を握りしめた。彼は、このゲームに全てを賭けていた。


 原生林を進む赤坂は、足跡を見つけた。それは、 他の参加者のものだった。

「誰だ?」

 赤坂は、慎重に足跡を追い始めた。やがて、彼は開けた場所に出た。そこには、一人の男がいた。

「君は?」

 赤坂が声をかけると、男は振り返った。

「俺は、五十嵐だ」

 五十嵐は、鋭い目で赤坂を見つめた。

「君も、このゲームの参加者か?」

「ああ」

 赤坂は、頷いた。

「協力しないか?」

 島野は、近くにいた上田に声をかけた。

「協力?どういうこと?」

 上田は、警戒心を露わにした。

「この島で生き残るためには、協力が必要だと思うんだ」

「ふん、あんたなんかに協力する必要はないわ」

 上田は、吐き捨てるように言い、その場を立ち去った。

「…やはり、信用できないか」

 島野は、肩を落とした。


 原生林を進む上田は、地面に仕掛けられた罠に気づいた。

「誰がこんな罠を?」

 上田は、周囲を見渡したが、誰もいない。

「まさか、他の参加者?」

 上田は、罠を避けながら、慎重に歩を進めた。

「何かあったのか?」

 背後から声が聞こえ、上田は振り返った。そこには、大野が立っていた。

「罠よ。誰かが仕掛けたみたい」

「罠?この島には、危険な動物もいるからな。それかもしれない」

 大野は、そう言いながらも、警戒を怠らなかった。

「…動物にしては、巧妙すぎるわ」

 上田は、疑念を口にした。

「…気をつけろ。この島は、思った以上に危険だ」

 大野は、上田に忠告した。


 ゲーム開始から数日後、最初の脱落者が出た。それは、体力的に劣る者だった。

「まさか、もう脱落者が出るとは」

 赤坂は、脱落者の遺体を見ながら呟いた。

「このゲーム、思った以上に厳しいな」

 島野は、そう言いながらも、気を引き締めた。

「次は、誰が脱落するのかしら」

 影沼は、遠くを見ながら呟いた。

「…弱者は、淘汰される。それが、このゲームのルールだ」

 五十嵐は、冷酷な表情で言った。

「…信じられない。こんな事が、現実だなんて」

 豊島は、遺体を見て震えていた。


 ゲームでは、エリアごとに得点が異なっていた。海鳥の繁殖地である北側の断崖は高得点エリア、原生林は中得点エリア、集落跡地は低得点エリア。参加者たちは、それぞれの思惑でエリアを選び、時には争い、時には協力し合った。

「ここは、俺たちのエリアだ」

 五十嵐は、断崖に陣取り、他の参加者を牽制した。

「ここは、私たちのエリアよ」

 小川は、原生林に罠を仕掛け、他の参加者を待ち構えた。

「ここは、俺のエリアだ」

 加藤は、集落跡地にバリケードを築き、他の参加者を寄せ付けなかった。

「…高得点エリアは、危険すぎる。ここは、安全を優先する」

 大野は、集落跡地で物資を集めながら呟いた。

「…私は、高得点を狙う。リスクを恐れていては、勝てない」

 影沼は、断崖を見据えた。


 ゲームが進むにつれて、参加者たちの過去が明らかになっていった。なぜ彼らはこのゲームに参加したのか。そこには、それぞれの事情、それぞれの思惑があった。

「俺は、過去のトラウマを克服するために、このゲームに参加したんだ」

 加藤は、過去の出来事を語り始めた。

「私は、病気の妹の手術費用を稼ぐために、このゲームに参加したの」

 小川は、涙ながらに語った。

「俺は、失われた名誉を取り戻すために、このゲームに参加した」

 木村は、悔しさを滲ませながら語った。

「…過去は、変えられない。だが、未来は、変えられる」

 赤坂は、過去を語る参加者たちを見ながら呟いた。

「…過去に囚われていては、前に進めない」

 影沼は、冷静に言った。


 協力関係にあった島野と木村は、食料を巡って対立した。

「ここは、俺が見つけた食料だ」

 島野は、主張した。

「そんなの、関係ないわ。早い者勝ちよ」

 木村は、食料を奪い取ろうとした。

「裏切るのか?」

 島野は、失望した表情を浮かべた。

「仕方ないのよ。生き残るためには」

 木村は、そう言い残し、その場を立ち去った。

「…信じていたのに」

 島野は、裏切られた悲しみと怒りで震えていた。

「…このゲームでは、誰も信じてはいけない」

 赤坂は、二人のやり取りを見て呟いた。


 夜、赤坂は、何者かに襲われた。

「誰だ?」

 赤坂は、暗闇に向かって叫んだ。

「お前を倒す者だ」

 声の主は、ナイフを手に赤坂に襲いかかった。

「卑怯な」

 赤坂は、相手の攻撃をかわしながら、反撃を試みた。

「…夜は、危険だ。常に警戒していなければ」

 影沼は、物音に気づき、周囲を見回した。

「…夜襲は、最も効果的な攻撃手段の一つだ」

 五十嵐は、夜襲を仕掛けた者を見ながら呟いた。


 赤坂は、影沼と協力関係を結んだ。

「君と組めば、生き残れるかもしれない」

 赤坂は、影沼に言った。

「私も、そう思っていたわ」

 影沼は、頷いた。

「互いに協力し、このゲームを生き残ろう」

「ええ」

 二人は、固い握手を交わした。

「…同盟は、一時的なものだ。いつ裏切られるか分からない」

 島野は、二人の同盟を見て警戒した。

「…同盟は、生存戦略の一つだ。状況に応じて、利用する」

 五十嵐は、冷静に言った。


 原生林では、罠の応酬が繰り広げられていた。

「また、罠か」

 上田は、地面に仕掛けられた罠を避けながら呟いた。

「今度は、私が罠を仕掛けてやる」

 上田は、罠を仕掛け返し、他の参加者を待ち構えた。

「…罠は、相手を欺くための手段だ。相手の心理を読んで、罠を仕掛ける」

 影沼は、罠を仕掛けながら呟いた。

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