闘技場荒らしと呼ばれた男

みゅうた

闘技場荒らしになった理由

俺の名はナジェバラム

バーサーカー族の男だ


バーサーカー族は物心つく前に戦いの基本を教えられる


そして俺の師匠は勇者と一緒に旅をして邪神を封印したらしい


「ロードス様〜薪割り終わりました!」


「ご苦労だったな…そろそろ休憩しようか?」 


集落から少し離れた山の中の広場が俺達の修行場だ


焚き火で兎や猪の肉を焼いて塩で食べる


シンプルだがこの食べ方が一番美味いのだと師匠ロードスは言う


「お前もかなり力を付けた…俺が教える事はほぼ無くなったな」


「そんな事は…」


「あとは応用だな…お前が力の加減を覚えるにも適してる場所だよな〜」


肉を貪りながらロードスは考えている


ナジェバラムはこの師匠が大好きだ


親を早くに亡くしたナジェバラムにとっては親代わりなのだ


程なくして師匠がこう切り出した


「お前…闘技場の存在は知ってるか?」


「闘技場ですか?」


「ああ…読んで字の如く、各国から選りすぐりの戦士が集まって戦う場所だよ」


「そんな場所があるのですか?」


「そろそろお前も闘技場デビューと行こうか?」


そう言うと師匠は集落に戻り何やら族長と話し込んでいた


翌日…旅支度をした師匠と共に山を降りた


向かった先は集落からほど近い町にある闘技場だった


受付を済ませると待合室に案内された


どうやら師匠もエキシビジョンで戦う予定らしい


屈強な男や中には女性の姿も見えた


「女と戦うのかよ…」


そんな事を呟いていると女剣士に声をかけられた


「あら…随分と可愛い坊やがいるじゃない…ここは子供の遊び場じゃないわよ」


「弱い女と戦って勝っても嬉しくないね」


そう言い返すと


「言ってくれるじゃ無い…あとでその言葉後悔させてやるわ」


自分の出番が来るまで他の出場者が戦ってるのを観戦した


「へぇ…ああゆう戦い方もあるんだな」


師匠のエキシビジョンマッチが始まった


どうやら数人とのバトルロワイヤル形式で戦うらしい


師匠の戦い方は俺の心に変化をもたらした


力を抑えながらも急所を狙って攻撃すれば僅かな力で相手を倒せて殺す事も無い


力だけじゃダメなんだな…師匠が俺の事をここに連れて来てくれた意味がわかった


そして俺の出番だ


勝ち抜きで決勝戦まで行って勝てば良いというものだ


俺は難なく勝ち抜き決勝戦まで登り詰めた


決勝の相手はあの女剣士だった


「驚いたね〜ただの坊やじゃ無かったの…名前教えてくれるかい?」


「人の名前聞く時はそっちから名乗るのが礼儀だろ?」


「こりゃ失礼したわ。私はシーラだ」


「シーラさんね…俺はナジェバラムだ。よろしく」


お互いに礼をして構える


同時に飛び出し剣がぶつかり合う


「なんて力…本当に子供なの?」


「ここだけの話…俺はバーサーカー族でね…武者修行として師匠にここまで連れて来られたんだ」


「アンタの師匠ってまさか…」


「戦士ロードスだよ…この界隈じゃ有名人らしいな」


「!!」


俺は気合いを込めて攻撃を放つとシーラさんの身体が吹き飛んで後ろの壁に激突した


ヤベェ!やり過ぎたか?!


しばらく動かなくなったシーラさんに駆け寄り安否を確認した


「良かった…気絶してるだけだ」


こうして俺はこの大会の優勝者になった


医務室でシーラさんに声をかけられた


「アンタみたいな相手と戦えて良かった…吹き飛ばされた時は死んだかと覚悟したけどね」


「ごめんなさい…もう少し力の加減を覚えないとヤバいね」


「これからどうするの?」


「師匠は次に行われる闘技大会に出場しろってさ…同じ種族以外とも戦って力の使い方を学ぶ必要があるからってさ」


「なるほど…彼らしいわね。ナジェバラム…これからも頑張ってね。相手を殺さないようにするのよ?」


「はい…シーラさんもお元気で」


こうして俺の闘技場巡りが始まった


各地で俺は優勝を重ねてついた異名が[闘技場荒らし]


その名前は彼等の耳にも届いていた


「へぇ…最近彼の噂をよく聞くようになったね。[闘技場荒らしナジェバラム]いつか戦ってみたい相手だね」


そう呟いたのは武者修行の旅に出ていた若かりき頃のリンダルトとレイロウであった


「リンダルト殿も闘技場に出れば逢えるのでは?」


「いや…今はまだその時では無いだろう…そろそろ国に戻らないといけないからね」


「そうでしたね…では急ぎましょうか?」


彼等が出逢うのはまだ先の話である


しばらくして[闘技場荒らしナジェバラム]の名を聞かなくなるのだがその理由は彼が故郷に戻ったからに他ならない


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闘技場荒らしと呼ばれた男 みゅうた @tomrina

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